第二話 〜真月の血編 其の弐〜■ 第二話 〜真月の血編 其の弐〜■


All human existing in the world. Hear a voice of God.
信じることに意義がある。
難しいのは、信じ続けていくこと。

信じることに意義がある。
信じるだけなら簡単と、皆は言う。

では、信じてみる?
この狂った世界の真実を。
                       Ustegnihs.T.Trans
Where does the world begin to move towards? What does the world plan? All began from here…….
All truth on darkness. You yet know nothing.
Let's tell all truth here.



 俺たちは今王宮の目の前にいる。門番の人に陛下への謁見するために取り次いでもらっているのだ。
「アデリア様ですね? お話は聞いております。こちらへどうぞ」
 そう兵士に言われ王宮に入っていく。王宮内は俺が思っている以上にすごかった。王宮だから普通とは違うと思ってはいたが、
表現ができない程にすごい。完全に圧倒されてしまったのだ。アデリアは明らかに慣れているようだが、
羽衣は俺と同じような反応をしていた。……当たり前だよな。俺たちは今まで普通に暮らしていたんだから……。
 この場にいるほうがおかしいと思うのが普通なんだろうな……。でもここにいるのもまた事実。そう考えると凄い所まで
きたんだな俺たち。
 今は王宮にいてこれから陛下のところに謁見しに行く。普段では考えもしなかった事だ。……俺たちはそんな凄まじい状況にいるだ。
 そんなことを考えている内にある部屋に入るように言われた。
「これから、謁見の間までは別の者が案内いたします。今しばらくお待ちいただきますようお願いします」
 そういえばあの人は門番だったもんな。
「アデリアはさ、やっぱり何度もこの王宮には来ているのか? 結構慣れているみたいだけど」
「そうだな、ここにはよく来る」
「アデリアはさ、どういう奴なんだ? 時空の歪を使って地球に来たり、アリアって言う使い魔(俺はペットだと思う)を持ってたり、
挙句の果てには王宮にも出入りしてるんだろ?」
 今まではそんなことは気にはならなかったのだが、王宮に来てからの落ち着きようといい、アデリア様と言う呼ばれようといい、
これは聞かずにはいられないだろう。
「…………」
 訳あり……って所だろう。言えない事ならそれでもいいけどな。
「アデリア様、お待たせいたしました。こちらへどうぞ」
 ようやく違う兵士が来て俺たちを謁見の間に案内してくれることになった。
「そちらの方々が例の方々ですか?」
 例の? おそらく真月の血……って言うことなんだろうな……たぶん。
「ああっこの男の方が例の人物だ。こちらの女性は私の仲間だ。もっともこの男も仲間だけどな」
「そうですか……こんなにも早く見つかるとは陛下も思っていなかったようで随分お喜びになっていいます。
後はあのことが無ければ……」
 あのこと? あのことってなんだ?
「失礼しました。失言でした。このことは陛下からお話があると思いますのでそちらで……」
 重要なこと……か。アリアが見た消えた人……GMウイルス……たぶんこの辺だろうと推測する。
 陛下はどのくらいのことを知っているんだろうか? GMウイルスのこととか……真月の血……のこととか……。
 う〜ん、こればっかりは陛下に直接聞くしかないな。
「もう少しで謁見の間に着きますので、お二方は心の準備をお願いいたします。……陛下の前では無礼な態度のないようお願いします」
 アデリアにも言われたが……どう心の準備をしたらいいんだ!? こんなところに来るのも初めてだし、陛下とかものすご〜く
上の立場の人と会うっていうのも初めてだし……。まぁ何とかなるだろう!
 俺としてはこの開き直りが一番の心の準備なんだろう。これ以上の準備はできなさそうだからな。
「ここになります。アデリア様から順にどうぞ」
 いよいよ陛下に会うときが来た! 陛下は俺の事をどう見るだろう……、どう挨拶をしよう……、そんなことばかりが頭をよぎる。
「では、どうぞ」
 俺が入るように促される。アデリアが入り(一緒にアリアも入った)、次に羽衣が入った。最後に俺が入るといった順番だ。
 最後と言うのもまた特に緊張してしまう要素の一つだ。
 ……謁見の間はすごく長かった。入ってから陛下の前にたどり着くまでが結構な距離があった。何か豪華って感じかな。
 陛下の前ではすでにアデリアたちが頭を下げて待っている状態だった。そこに俺も同じように頭を下げてしゃがみこんだ。
「良く来た、真月の血を受け継ぐ者とその仲間よ……。われわれはそなた達を歓迎する。私はこの国を治めている者、
名をエミリオ・ラフ・ラングレーと申す」
 ラングレー陛下か……。陛下と言うのはホントだったんだ。疑っていたわけではないのだが実感が無かった。
 そんなことよりラングレー陛下は、真月の血を受け継ぐ者が俺って事は知っているということか。
 ならGMウイルスとかの事とかも知っているのか? アリアが会った人と言うのも……。
「……たぶん耳には入っていると思う……」
 アデリアが俺に耳打ちをしてくれる。なら話は早いって事だな? アデリアは頷く。じゃあまずは俺が話すか。
「私が行くよ、滝ちゃん。たぶん滝ちゃんはちゃんと喋れないと思うよ。いつもみたいに」
 うっ……良くご存知でらっしゃる……さすがは羽衣様だな。そう、俺はこういう状況はハッキリ言って得意じゃない。
 以前高校の面接のときにいろいろやっちまったからな……。それがトラウマになっているのかもしれないな。そろそろ克服しないと
と思うのだが……できるといいが……。
「陛下殿。お初にお目にかかります。私は地球から参りました、名を涼宮羽衣と申します。私のことは羽衣とお呼びください」
 スゲー……羽衣ってこんなことできたのか!? こんなかっこよすぎる羽衣を見るのは正直言って初めての気がする。
「そうか……キミが真月の血を受け継ぐ者と共にきた者か。歓迎するぞ」
 キミが? 羽衣の事も情報が入ていたのか。それともアデリアが使いでも出したのかな? まぁどっちでもいいが(なら考えるな)。
「勿体無いお言葉……有難う御座います」
「うむ……私のことはラングレーとでも呼ぶと良い。このままでは話しにくいであろう?」
 この人はきっと皆に慕われている陛下なんだろう。初対面の俺たちに対してもこんな対応ができるなんてすごい!
 普通は警戒してもいいものだが、この陛下は完全にすべてを理解したような目をしている。吸い込まれそうな目……。
 これが……国を治める者の目なのか……。
「お初にお目にかかります。私が真月の血を受け継ぐ者、名を真月滝と申します。陛下殿の事はお言葉に甘えさせていただき、
ラングレー陛下とお呼びさせていただきたいと思うのですが、ご都合のほどはどうですか?」
 陛下は良かろうと言い頷いた。……それじゃあ少しずつ本題に入っていこうか。
「この街はどうだった、滝よ? 正直な感想を言ってくれてかまわない。どういう街で、どうなっていたかを……」
 正直にか……俺の見たものは……。

 ……正直酷いものだった。この街に入るまではまったく予想していなかった出来事が起こっていた。崩壊……と呼ぶべきなんだろうか?
 この街はほとんどの家屋やビルなどが倒壊していた。理由とかは何にも知らないが、一つ言える事は……人間の仕業じゃない。
 ……爪あとが多数あった。大きな足跡もあった。
 城下の人々はほとんどが避難したということは門番から聞いていた。しかし……まだ何人かは……。その人たちはきっと……。
 正直生きていられるような状況じゃない。……そのことはこの街を歩いてきた俺が良く知っている。
 これは侵略とかそういったものではないこともまた分かった。なぜなら……王宮には一歩も踏み入れていないからだ!
 普通この国を滅ぼすとか思っているのなら、王宮を落とせば終わる、そう考えるのが妥当であろう。しかし、
王宮に傷を付けられた形跡は無い。と言うことは目的はなんだ? ただの殺戮か? 確かにここは王都だ。
 人は他の街よりたくさんいるだろう。だが、襲われたのはここだけ。殺戮が目的なら、他の町にも行ったらよさそうなものだが、
そういった報告は無いのだと言う(門番から聞いた情報だ)。

「確かにここは一切狙われなかった。殺戮目的なら確かに他の町にも行くだろう。しかし報告は無い」
 ここでも報告は受けていないのか……。目的はなんだ? 王都にはあって他の街には無いもの。きっと奴らはその「王都にしかないもの」
を狙ってきた……そう俺は解釈した。だがその場合この王都にしかない物とは何だ? 俺はここには詳しくない。
 アデリアなら何か分かるだろうか? 聞いてみる価値はあるだろう。
「アデリア、この街にのみあって他の街には無いものって何かあるか?」
「どういうことだ?」
「俺は奴らが来た目的を王都にしかない物を狙ってきた、そう言う風に解釈してみたんだ」
 アデリアは納得したみたいだ。同時にラングレー陛下も羽衣も納得していたようだ。
「……陛下、話してもよろしいですか?」
 アデリアはラングレー陛下に了承を求めた。ラングレー陛下はためらわず頷いた。
「……ここには工場がいくつも存在しているのだ」
「工場? 兵器とか作っている工場って事か?」
「確かにそれもある……。だが、それは他の街にもあるものなんだ。……ただこの街にしかないもの……それは……」
 アデリアは少し戸惑っているように見える。もしかして、国家機密くらいの情報なのか?
 ラングレー陛下にも言っていいか聞いてたみたいだし……。
「話しにくいなら言わなくてもいいけど?」
 俺はそうアデリアに言った。アデリアはありがとうと言い、話を続けた……。
「……ここの研究所の一つに……GMウイルスが保管されているの……」
 GMウイルス……そうきたか……。この街にあるものだったのか……。ラングレー陛下はアデリアに変わり状況を説明してくれた。

 この街には研究所や工場が多数存在している。中には兵器を製造している工場も多数あるらしい。
 でもそれは他の街とも連携で行っていると言うことで、他の街にも幾つかの支部があると言う。
 同様に食べ物を製造している工場や、衣類などを製造している工場もあるが、それらも他の街に支部があるようだ。
 しかし……GMウイルスは違っていた。GMウイルスは極秘にされていた。一部のものしか知らなかったのだ。
 でもGMウイルスはずっと昔に、研究所の地下に隔離閉鎖したのだと言う。……あの事件が起こったからこそ隔離したのだと言う。
 そして今から3年前、研究所の閉鎖と共に研究所の大掃除が決行された。そこであの部屋を見つけた。GMウイルスが眠る部屋……。
 研究員達はこの部屋のことをまったく知らなかった。その当時はこの事を完全に破棄したと言うことで誰にも話さなかった。
 研究員達はこの部屋を不審に思い、陛下の下に部屋のことを話に行った。もちろん陛下はGMウイルスの研究は知っていたので、
隔離されている部屋に向かった。そこで発覚した。GMウイルスが足りないことに!
 王宮に保管してあった資料を調べてみると、GMウイルスが隔離閉鎖したときの資料が見つかった。
 それは当時の陛下の直筆だった。

 西暦682年 15月27日 午後(地球とは暦が違うらしい)
 この日われわれはGMウイルスを隔離閉鎖した。このウイルスは思っていたより危険である。
 人格は崩壊し、自爆活動をしてしまう。その結果は……言うまでもない。
 私は研究員達にこの話は外部に漏らさないよう最終通達をした。家族にも、知り合いにも、誰にも漏らさないよう。
 この隔離のことを知っているのは私と数人の研究員達のみ。
 私は研究所内では陛下と言う立場ではない。ただの研究員として活動していた。それ故にショックが大きかった。
 私が自ら望んではじめたことがこのような結果になってしまうとは……。しかしこの力は知ってはいけなかった。
 だから隔離閉鎖にいたったのだ。このウイルスが忘れ去られるためにはこれが一番いい方法だ。

 3年前の西暦が1152年、この資料を書いたのが682年。
 その差470年。つまり470年間は誰もこの部屋には立ち入らなかった。にも拘らず当時の数より明らかに減っていた。
 この研究を知っている人だからこそ分かる恐怖。
 GMウイルスを打たれた人間は人格が崩壊し、殺戮をする。更に首を切り落とすか、粉々にするまで死なない存在。
 当時の陛下と研究員達はこれを体験している。そのときは首を切り落として終わった。
 あれにはただ死を感じたという。殺しても死なない存在……。考えられない存在だった。
 そしてGMウイルスがなくなっていることに気づいてから数ヵ月後に争いが起こった。そのときに出てきたのが、真月の血を受け継ぐ者!
 陛下と当時の研究員達は瞬時に分かったという。GMウイルスに汚染されているものだと……。
 でも町の住民たちには救いの神に見えていた。
 真月の血を受け継ぐ者 その災いから逃れるべく必要とした最終手段
 この言葉を見たものは皆信じたであろう。だから打つすべが無かった……。真月の血を受け継ぐ者は確かに争いを終わらせた。
 ……人格が崩壊し、仲間を殺し、自爆し、大地を焼き払い……。
 その後生存者に聞いた言葉から更にGMウイルスの可能性が増したという。だから解剖した。
 ……GMウイルスは検出された。王宮に属すものにはこの事実が告げられた。そこにはアデリアも居たと言う。
 だからGMウイルスを知っていた。その話を民間人にすると、怒り出し侮辱行為とみなされ何人かの兵士が殺されてしまった。
 だから隠してきた……。

 フクシュウスル……この言葉が俺の頭をよぎる。これはもしかして復讐?! ここでGMウイルスは作られた。
 この街を狙うには十分な理由かもしれない。
「ラングレー陛下、これは復讐ではないですか?」
 ラングレー陛下はハッとする。意味は伝わったらしい。周りにいた兵士も反応を見せる。
「その可能性はあるかもしれません」
 アデリアも俺の考えに賛同のようだ。ラングレー陛下も納得したようだ。……そんな時一つの伝令が入ってきた。
「なんだと!?」
 いったい何事だ?! 何が起こったんだ?!
「……ラグーンが死んだようだ……更に例の謎が解かれていたようだ……」
 ラグーンが死んだ? ラグーンはもともと俺が倒すべき相手……。真月の血を受け継ぐ者のみが倒せる相手……。
 あっ! まさか……GMウイルスか! あれはもともと真月の血を基に作られたって言ってたよな……。だったら……ラグーンを倒せる!
 それに謎ってなんだ? エクストランに来る前に少しアデリアから聞いたっきりだから忘れていたが、これもGMウイルスか?!
「なぁ……全部GMウイルスが関わっているんじゃないのか? ラグーンは真月の血を受け継いでいる俺しか倒せない。
でも、真月の血を基に作られているなら倒せるんじゃないのか? それと話は変わるが謎って言うのはなんだ?」
 俺は思っていることを口にした。
「謎のことは話してないのか、アデリア?」
 ラングレー陛下は不思議そうにアデリアを見た。アデリアは忘れていたと言わんばかりにおどおどしていた。……なんだかな。
 その内容についてはラングレー陛下が語ってくれた。
「謎と言うのは兵器のことなのだ。その兵器は強力な古代兵器らしいのだ。
この世界が創設されたとき魔界、天界、人間界の3つの勢力が争ったことがあった。人間界と天界はお互いのことを理解し、
和解に至った。だが魔界はそうはならなかった。魔界は兵器を持ち出してきて人間界と天界を攻撃してきた。
それを当時真月の血を受け継ぐ者が封印したんだ。
その封印をラグーンは開こうとしていたのだ。その技術を手に入れていたようなのだ」
 なるほど。その古代兵器を復活させられる前に奴を倒すのが俺の当初の任務だった、そう言うことか。
 アデリアは頷く。でもラグーンは死んで……謎、いや封印がとかれていた。もしかしてこれがあの言葉の意味なのか!?
「滝の言うとおりGMウイルスが完全に関わっていることは間違いないようです、陛下」
「うむ……アリアが聴いたという言葉……真月の血の文献に残っている言葉……、
これらは全て古代兵器に連結しているかもしれない。GMウイルスを奪った者は古代兵器について知っていたのじゃろう。
だからGMウイルスを持ち出した……」
 古代兵器か……いったいどんなものなんだろう……。そんなに危険なものなのか?
「……陛下、説明してよろしいですか?」
 ラングレー陛下は頷く。これも国家機密だったって事か……。

 古代兵器……それは魔界が持ち出した最終兵器だった。さっき陛下が仰った、三界の争いで持ち出したもの。
 それで天界と人間界を攻撃してきた。威力は絶大だった。一瞬にして見渡す限りが焼け野原になったと言う。
 それは勝利から絶望に変わる一瞬だった。人間と天使は協力することで悪魔とも和解できると信じていた。
 それが一瞬で崩れた。それどころか滅ぼされる危機が訪れた。
 ……そんな時、一人の男が前に出た。それは人間だった。その男は古代兵器に近づいていく。悪魔はそれに驚き第二射を発射する。
 その砲弾を男はかき消した。どういう原理かは分からない。しかし砲弾はなくなったのだ。
 そして男は古代兵器にたどり着くと古代兵器に触れた。その瞬間眩い光が古代兵器と男を包んだ。
 ……光が収まるのに数分かかった。その間は目は開けられないほどの光だったので何が起こったかはわからなかった。
 だが光が収まると古代兵器がなくなっているのが分かった。男はその場に立っている。その男はこう言った。

「私は真月の血を受け継ぐ者! 兵器は私が封印した!!」

 その言葉を聴き悪魔達は男に攻撃を仕掛けてくる。悪魔達が男に近づいた瞬間また眩い光に包まれた。
 今度の光は一瞬で収まった。
 ……人間と天使は驚いた。……悪魔がいないことに!!!
 今の今まで目の前にいた悪魔が一瞬で姿を消した。辺りを見回しても一匹もいない。そして男が戻ってくる。
 人間と天使は何が起こったのか聞いた。その男はこう言ったそうだ。

「先ほどの兵器はここの土地に封印した。封印解除の方法は私のみが知っている。勇気のあるものは前に出ろ!」

 誰も出ようとはしない。当然警戒しているのだ。そんなとき6人の男が前に出た。その一人が後に陛下の先祖となる人だ。
 その人の名はパトリック・ラフ・ラングレー。そしてあとの五人も後の各世界ごとの陛下にまたはトップになる者の先祖だった。

「勇気のある者たちよ、感謝する。早速だがこれを受け取ってもらう。
これは、兵器を封印するために使ったものである。この中に兵器に使われていた要素が入っている。
これを全て一つの場所におき、私……あるいは私の子孫が触れることにより、封印が解除される。兵器が復活するわけだ。
キミ達にはそれを阻止してもらいたい。今は私以外に封印を解けるものはいないが、いずれ封印を解けるものが現れる。
その輩から守ってほしいのだ」
「これを守るには具体的にどうすればいいんですか?」
「これらは基本的には星に対して一つずつ忍ばせようと思っている。これは基本的に見えるものではない。
今は私の力で具現化しているので見えるのであって普段は空気と同化するのだ。
だからこの「物」を守るという言い方ではなく、あなた方がいる星に来る侵入者。もしくはそれに準じる何かが起こったときに、
率先して行動してもらいたいということなのだ。その輩を排除してもらう」
「「「全力を尽くします!」」」
「皆ありがとう。
ではこれから一人ずつ各世界にとどまらせる。この世界はパトリック・ラフ・ラングレーあなたに任せる。
この星の名前はエクストランだ。私は地球と言う星にいる。覚えておいてくれ。
後これを皆に渡しておく。これは私がいる地球と皆の世界を繋ぐもの。しかし効力は一回のみ。良く考えて使ってくれ。
科学が進めば移動手段ができるかもしれないが、そうならないかもしれない。
一つ確実なのは……世界の危機はまた訪れる! これくらいだ」
 そうして皆は各世界に分かれたのだという……。

 これが古代兵器……そして真月の血……。
「だから文献には、
真月の血を受け継ぐ者 その災いから逃れるべく必要とした最終手段
こんな一文が載っていたんだな……。古代兵器を封印か……。そんな力俺にもあるのか?」
 当時の奴にはできたのかもしれないが、俺は今の今まで真月の血って事すら知らなかった。力は薄くなっているかもしれない。
「陛下……今古代兵器はどこに?」
「……まだ所在は確認できていない」
 そうだ! 古代兵器だ! 確かGMウイルスが……GMウイルス? GMウイルスはただのウイルスであって動けるものじゃない。
 とすると……もしかして増殖の可能性アリ!?
「ラングレー陛下! これは推測なのですが、GMウイルスを持ち出した奴は各世界に隠した「物」を手に入れたって事ですよね!?
と言うことは、今奴がエクストランにいる可能性も低くなるんじゃないですか?」
 そう言うことになる。「各世界」って言うのがポイントだ。
 その奴は世界を移動する手段を持っている。俺たちみたいに時空の歪を使っているかもしれないし、いやもっと他にあるのかも……。
 そうなれば奴の居場所は七つの世界のどこか!? エクストランにいる可能性も低くなるって訳だ。
「滝、おぬしは目の付け所がやはりどこと無く違う気がするのぅ。やはり真月の血を受け継いでいるからじゃろうか……」
 正直自覚はあんまり無いが周りがそう言うんならそうなのかもしれないな。周りの奴のほうが案外俺を見てくれてるのかもな。
「……滝、後でわしの部屋に一人で来てはもらえないだろうか?」
「一人でですか?」
 俺は疑問に思う。普通アデリアも一緒って言うのが普通じゃないのか?
「……いや……滝一人で来てほしいのじゃ……」
 なにやら重い空気が流れるのが分かった。なにか……重要なこと……、そんな気がする。
「分かりました。後で「一人で」お伺いいたします」
 感謝すると一言いい、その場を立ち去った。そして一人の兵士が俺の前にやってきた。
「滝様。2時間後にこの部屋までお越しください」
 そう言って一つの紙を渡された。そこには地図らしきものが書かれていた。これがラングレー陛下の自室って訳か……。
 俺は丁重に折り曲げポケットに入れ、いったん謁見の間を後にし廊下に出た。
「なぁ、俺は後2時間で陛下のところに行かなきゃなんないんだけど、お前らはどうするんだ?」
「とりあえず、買い物してこようと思う。羽衣と一緒にな」
「でも、街はあんな状態だろ? 買い物なんてできるのか?」
 さっきの話の内容で分かるとおり、言葉で言うと……崩壊に近い状況だ。買い物は可能なんだろうか?
「王宮にはね、大量の食料とか武器とかがあるんだって。それに今は街があの状態でしょ? だからいろんな物資が王宮に届いてるの。
それを買いに行くって事なの」
 羽衣がそう教えてくれた。なるほど王宮だもんな、いろいろあっても不思議じゃないよな。それに補給物資を管理するなら、
 やっぱり王宮が一番て事なんだろうな。納得だ。そんな会話をして、俺とアデリアたちは分かれた。

 ……そして2時間がたった。俺は兵士からもらった地図を頼りに陛下の部屋を探している最中だ。
「こう部屋が多くちゃさすがに探すのも一苦労だな……」
 ついつい愚痴を言ってしまった。でも部屋が多いのも確かだ。たぶん100部屋とか余裕であるんだろう。そんな雰囲気だ。
 ……探し回ってどのくらい経っただろうか? ようやく陛下の部屋にたどり着いた。長かった……。実に長かった……。
 コンコンッ!  俺は部屋の前に来てノックをした。
「真月滝です。ラングレー陛下いらっしゃいますか?」
 そう言うと部屋の扉が開いた。そこには一人の兵士が立っていた。
「こちらにお入りください。それでは私は外で見張りを続けます」
 そうラングレー陛下に向けて言った。この人は見張り役の人か。いっぱいいるから正直誰が誰だか……。
「滝、こちらに来なさい」
 そう言われ陛下のほうに近づく。……だんだん緊張してきた。この部屋には今俺と陛下の二人しかいないんだもんな……。
 緊張しないほうがおかしいだろ……。
「まずはこれを見てほしい」
 そういって一枚の紙切れを渡された。……なんだこれ? なんて書いてあるんだ?
「……これは……ラクニクス語……」
 俺は何を言っている? こんな文字は見たこと無いだろう。……じゃあ何で分かる? 本当に知らないのか?
 どこかで見たんじゃないのか? いや……見たことは無い、それはハッキリと言える。じゃあ何で分かるんだ?
「やはり、キミには真月の血が流れているんだな……」
 ラングレー陛下はそうボソッと言った。この文字はなんなんだ?
「これは、滝が言うとおりラクニクス語。その昔世界が七つに分けられたときに真月の血を受け継ぐ者が残したものだ。
最近までは解読できていなかったのじゃが、最近になってようやく解読ができた。
もともとこの文字は真月の血が残したものなのだ。……滝は真月の血を受け継いでいるから分かったのかもしれない。
滝? 読めるか?」
「古代兵器封印の手段を残す
各世界に散らばりし七つの宝珠を手にし
約束の地なる場所の先で
封印の言葉を唱えよ」
「さすが真月の血を受け継ぐ者だ。完璧に読めている」
 そうか、十魔がいるからか! だから分かるってこと……かな? 確信は無いがそれしかないんだろうな。
 何らかの形で十魔が俺に力?を貸してくれているのかもな。
「……実はもう二枚あるのだ。これはまだ解読がまったくできていない。しかし……滝なら……!」
 読めるかも……ってか? 確かに。今のも読めたしやってみる価値はありそうだ。それに……重要なことが書かれている可能性が高い。
 さっきのは封印について……今度はなんだろう……。

 一枚目……
 真月家に伝わる秘伝の武具を残す
 この武具を手に入れしとき
 宝珠のありかが明らかになろう
 各世界に一つ、計七つ存在する
 手にするには特定の場所に行き
 行動を起こす必要がある
 場所は以下の通りである
 エクストラン 聖なる焔
 地球     鍾乳洞
 ミッドガル  大空洞
 エデン    ヘブンスホール
 ラグーン   ブラッドリヴァー
 クメール   忘れられし里
 セイクリッド 約束の地
 これらの場所は真月の血を受け継ぐ者のみが入ることが許されている
 その他のものが踏み入れれば
 天より災いが降り起こるだろう……

 二枚目……
 真月の血を受け継ぐ者よ
 我を呼び覚まし真なる力を授かれよ
 神聖なる大地に踏み入れよ
 その場所にてお前を待つ

「こう書かれています」
「……実に興味深い文じゃ……」
 陛下はおもむろに棚から本を取り出し何かを調べだした。今言った分に何か重要なこと……があったのだが、分かったことがあるのか?
「あった! 滝これじゃよ! この場所じゃよ!」
 そこには「聖なる焔」の場所と、「神聖なる大地」の場所が記してあった。
「秘伝の武具がある場所……真なる力がある場所……この場所はいったいどんなところなんですか?」
「……この場所は、調査ができない場所なんじゃよ」
 調査ができない? どういうことだ?
「この場所は何度も先遣隊やらを派遣したのじゃが一人として帰ってくるものはいなかったんじゃ……」
 そんな危険な場所なのか!? それとも呪われた場所……。どっちにしても情報がないということか……。分かっているのは場所のみ。
 これじゃあ俺たちも帰ってこれないかもしれないよな……。それはさすがに嫌だよな、うん。しかし……。
「……この二箇所に行ってみます。俺は真月の血を受け継ぐ者ですからもしかすると……」
 他の普通の奴じゃ無理かもしれないが俺ならどうにかなるかもしれない。さっきの二枚にも書いてあった様に、
俺……真月の血を受け入れるような文だった。だから他の奴らはたどり着けなかったし、帰ってこれなかった……。
 この解釈が一番だろう。でも俺だからといって帰ってこれる保証はどこにも無い。もしかしたら俺も皆のようになるかもしれない。
 でも、この場所に行かないと武具は手に入らない。その武具がないと宝珠の場所が分からないみたいだし……。
 宝珠が手に入らないと世界が……地球もエクストランも他の星も危機にさらされることになる。
 この状況に対応できるのが俺なら……やろう! 怖がってても何も始まらない!
「では、アデリアも共に行かせよう」
「でも危なくないですか? 今まで先遣隊を送って一人も帰ってこなかったんじゃないんですか? 俺一人のほうが……」
「それは違うぞ滝。アデリアは滝と共にいるべきだと私はそう考えているのだよ。
滝には分からぬかも知れぬがアデリアは……変わってきているのだ。地球に行く前と帰ってきてからは明らかに変わったのだ。
それはきっと、滝や羽衣といった信頼できる仲間に出会ったからだと思っている。それにアデリアは一緒に行くと言ってくるだろう。
あいつはそう奴なんじゃ。それに羽衣も一緒に連れてってやるのがいいんじゃないか?」
 そうか……陛下はそんなとこまで……。確かに羽衣は置いていくわけには行かないよな。ここは地球じゃないしやっぱり置いて
行くのは、不安が残る。アデリアは……確かに自分よりほかの事を気にする奴だし、一緒に来るとか言いかねないよな……。
 だったら、最初から一緒に行くっていったほうがいいって事か。
「分かりました。アデリアと羽衣と共にこの二箇所に行って来ます!」
 俺の考えはまとまった。ラングレー陛下も了承してくれた。後はあの二人に伝えるだけか……。なんて言うかな……あいつら。
 ……っていうかあいつら何処にいるんだ? 何か買い物がどうとか言ってたけど、場所は聞いてなかったな。
「ラングレー陛下、王宮の中に物資が保管してある場所があると聞いたのですがどちらにあるのでしょうか?」
 意味を分かってくれたんだろう、すぐに兵に案内させると仰ってくれた。さすが人徳のある人は違うね〜。
 ラングレー陛下は他に用があるようで邪魔にならぬように部屋を出た……らそこにはすでに兵士が待機をしていて、
物資保管所に案内してくれた。そこには買い物の真っ最中の二人がいた。
「お〜い、アデリア! 羽衣〜!」
 その声に気づいたようでこっちに来いと言わんばかりに手を振っていた。……お前らが来いってんだ……。二人の前じゃ
言ないけど……。
「もういいの? 話し終わった〜?」
「ああっ。次の行き場所も決まった」
 俺はラングレー陛下と話したことを説明した。紙の内容も伝えておくか……。
「……なるほど。当然私も行くぞ! われわれは仲間だ。行くのが必然! ……陛下もこう言うと分かっていたんだろうな」
 確かに陛下の言うとおりだ。まぁ俺もそうだとは思ってたけど。
「当然私も行くよ? 滝ちゃんと一緒がいいもん♪ それに知らないところで一人も嫌だしね」
 万丈一致、決定だな。ならまずはどっちに行くかだな。さて……どうするか。……と言うことを聞こうとしたときに、
 羽衣が俺に言い寄ってきた。ちょっといいところだったのに……。
「まだ買い物が終わってないから、終わってから出発でいいよね♪」
 まだ買い物の途中でしたか……。それは失礼しました!

 ……それから約2時間俺はアデリアと羽衣の買い物に付き合わされた。思ったより物資保管所内は広くいろんなものがあった。
 何か街がそのまま王宮に入ってきた!みたいな感じだった。それにつき合わされたのだ……。女の買い物は何で長いんだろう……。
 今度読者の皆さんと討論でもしたいな! うん! ……それはさて置き、ようやく買い物が終了した。
「……え〜と、2時間前の話に戻るけど……いいかな……?」
 恐る恐る喋っているのはなぜだろう。何も悪いことはしてないのに……。
「うん? そうだな、話の続きをしようか」
 良かった〜先に進めそうだ♪ 何かハッピー♪ みたいな♪ ……コホン……話を戻そう。
「どの場所から行くかなんだが何か意見ないかな?」
「私は「神聖なる大地」から言ったほうがいいと思う。真なる力と言うほうが重要なんだと私は思う」
「私もアデリアの意見に賛成〜。強くなったほうがいいよ〜」
 確かにそうだな……。この先何があるか分からないし、真なる力がどういう形のもので、どう使えるのかは分からないが、
パワーアップできるのだとすればそちらを先に行くほうがいいかもしれないな。
「じゃあ目指すは……神聖なる大地だ!!!!」
 目的地は決定した。場所の地図は陛下に見せてもらった本に載っていたので、それをメモった物がある。それを頼りに進めばいい。
 買い物も済んだし、場所も分かったし、準備は万全だ。
「さぁ! 行こうか!」
 それを掛け声に俺たちは神聖なる大地に向かって歩き始めた。道のりは王都からは約2日くらい歩いたところにあるようだ。
 まぁ歩くのには少し慣れてきたところだから、そんなには苦にはならないな。
 ……唐突に話は変わるが……またもや俺は気づいてしまった……、アリアがいないことに!
 なぜ俺のいないところでアリアはいつも消えるんだ〜!
「……あのさ、アリアがいないんだけど?」
「……いろいろとあってね……今はおうちでお留守番なの」
 羽衣がなぜかひっそりと教えてくれる。なぜヒッソリ?

 ではここからは羽衣の回想た〜いむ♪(拍手!)
 さっき滝ちゃんがラングレー陛下のところに言ってたときに起こった出来事です。それでは回想開始です。
「買い物って服とかもあったりするの? あったらほし〜な〜」
「あるわよ。でも羽衣に似合うものはあるかしら? フフッ♪」
 こんな他愛も無い会話をしていたの。そこに突然!! 奴が現れた!
 ちゃら〜ん! アリア参上〜。ここから少しずつ話がおかしくなったのよね……。
「きっと羽衣さんに似合う服はたくさんあるですの♪ アデリアなんかより綺麗だからですの♪」
 ピキーン! アデリアの目が光った! 戦闘開始です!!!!
「あ〜ら、アリア今何と仰いました〜?」
「アデリア「なんか」より羽衣さんのほうが似合う服はたくさんあるといったんですの」
「なんか? なんかとは何よ!」
「僕は本当のことを言ったまでですの。悪いことはしてないです」
 こんな言い争いが続き……決着のとき!!!
「アリアはお仕置きが必要ですわよね〜!!」
 アデリアの怒りが頂点にたまって決着がついた。アデリアの勝ちと言う形で。敗者のアリアは……?
「悪かったですの〜。出してですの〜(涙)」
「だめよ! 少しの間そこで反省してなさい!!!」
 そう言って牢屋に閉じ込めちゃったの! かわいそうなアリア……。あ〜かわいそうなアリア。
 結局後で私が出してあげたけどね♪(アデリアには内緒よ♪)
 それで肝心のアリアは私がアデリアをひきつけている間に家に帰ってもらったの。自宅療養中ってこと。
 んで私たちが帰ってくる頃にまた牢屋に戻って……こんな作戦を極秘で実行中なの♪
 と言うことで回想終わりで〜す。ちなみにこの出来事は滝ちゃんは知りません。 ちゃんちゃん♪

「まぁ留守番してるならいいんだけどさ……」
 なんか腑に落ち何は気のせいだろうか……。そうこう言っている内に今夜の野営所に到着した。
 飯を食い終わると俺は進んで寝ずの番を引き受けた。前まではアデリアにどうするか相談されてやっていたのだが、
俺も成長して進んでやろうといったわけだ。やはり! 俺がやるべきだと思ったわけですよ。いろんな意味でね……。
 まぁそれはともかく、何もおこらないと祈りつつ火のそばに腰を下ろし夜明けを待つのだった……。

 チュンチュン……チュンチュン……。
 朝がやってきた。日が昇りまた一日が始まる。予定通りに行けば今日には神聖なる大地に到着するだろう。
 今回は今のところ何事も無く順調に来ているから、今日中には着くと思う。
「う〜ん……今日もがんばるか!」
 朝の気合入れをする俺。なんか朝日が当たってカッコイ〜♪ ……一人でやってても虚しい気もするが……はぁ〜……。
 まぁ、気を取り直して今日もがんばろう!
 俺はアデリアと羽衣を起こし、朝食の用意を手伝った。俺も多少の料理ならできるから少しは役に立っただろう(と思う)。
「んじゃ行くか!」
 朝食が終わると足早に後片付けをして、目的地に向かい歩き出した。
「滝ちゃん、具体的にはその場所でどういうことをするの?」
 さてどういうことをするんだろうか? 羽衣に言われるまで気づかなかったが、何をする場所なんだろうか?
 パワーアップできるという理由で来たけど、何か物が手に入るのだろうか? 俺自身がパワーアップするのだろうか?
 良く考えると何をするのかって言うのはわかんないよな。
「どうなんだろう? あの紙には場所しかかいてなかったからな。あとは 我を呼び覚まし真なる力を授かれよ
これが書かれていただけだから、何をするのかはわからない」
「陛下は何か知らなかったの? 持ってたのは陛下なんでしょ?」
「確かに持っていたのは、ラングレー陛下だ。でもこの文字の解読に成功したのは最近らしい。
しかもこの二枚は解読が追いついてなかったらしく、訳したのは俺なんだよ。真月の血があるから読めたんだと
ラングレー陛下は仰っていた。事実読めたんだからそうなんだろうけど」
「これは滝が解読したのか。確かに私たちには読めない字ではあるな。読めるのはおそらく……真月の血なんだろう」
 アデリアにも読めなかったのか。これは真月の血で読めるというのが当たりのようだな。
「神聖なる大地に行ったらどうするかも自然と分かるんじゃないか?」
「それしかないようだな。今考えても分からないものは分からないしな」
 アデリアの言うとおりだ。今は目的地に行く、これで十分だろ。

 これから少しの間 Resting time!!
 あれから3時間くらい経った。今は昼食をとっている最中だ。腹が減っては戦はできぬって言うしな、飯は食っとかないと。
「これうまいな! アデリアの味付けか?」
 アデリアは恥ずかしく頷く。羽衣の料理にアデリアの味付け。これがまた最高にうまい! 皆にも食べさせてやりたいくらいの味だな。
 アデリアももう少し自信を持てばいいのに。私の味付けは最高よ! 位言っても罰は当たらないなホントに。
「俺の釣った魚も食ってみてくれよ。うまいぞ!」
 そう、俺も料理の手伝いのために釣りをしたのだ。ちょうど川があったし、食料調達にはもってこいだと思ったわけですよ。
 んで釣りをしたら結構釣れていいおかずになったって分けだ。
「うん♪ おいしいよ〜♪ さすが滝ちゃんだね♪」
「ま〜俺にかかればこんなもんだよ!」
 調子に乗る俺。でも釣りはそれなりに得意だから調子に乗っても悪いことではない、と勝手に思っている俺がいるのだった。
「そこの醤油とってくれないか?」
「はい、滝ちゃん」
「さんきゅ〜」
 これまた懐かしいな。地球にいた頃はこんな会話を嫌ってなるほどしてたんだよな。でもこんな他愛も無い話をすることで
 安らぎを得られるのかもしれない。日常では気づかないかもしれないけど、人間は結構癒されてるんだと思う。
 それに気づいていないだけなのだ。でも気づかないからこそ癒されているのかもしれない。気づいてしまったら、
 逆に意識をしてしまって疲れてしまうだけなのかもしれない。結局人間は知らないところで癒されているって事なのだ。
「……ありがとう……」
 俺はそう一言空に向かっていった。誰に対する言葉でもない。ただ言ってみたかったんだ……。ありがとうって……。
 ということで Resting time しゅうりょ〜。本編の続きへどうぞ。

 昼食をとり終えた俺たちはまた歩き出していた。目的地までもあと少しだし、頑張っていかないとな。
 どんなところかもまだ分からない。何をするところかも分からない。それでも行かなきゃならない。この世界を救うためには、
行かなければならない。真月の血って言うのもあるけど、俺自身がこの世界を救いたいと思い始めてるのだ。
「後どれくらいだ、滝?」
「そうだな・・・地図によるとあと1時間くらい歩いた先かな」
 あと1時間か……。自分で言っといてなんだがもうこんなところまできたんだよな。こんなのどかなところを歩いててほんとに
神聖なる大地にたどり着くのだろうか? ちなみ今は森林の中を歩いている。光が漏れてきれいな森だ。
 でも、あと1時間もすれば神聖なる大地に到着。きれいなところ? キケンなところ? どんなところかなんて想像もつかない。
 とりあえず行くということしか頭に無かったから、あんまりどんな所かは考えなかった。でも陛下の話では、
調査隊を送っても帰ってきたものはいない。こういう話だった。と言うことはキケンな所か? しかし俺は真月の血を受け継いでいる。
 他の一般人がいけなくても俺がいれば行ける、そう思っている。じゃあ俺にとってはキケンじゃないのか?
 じゃあアデリアは? 羽衣は? この二人が行けるなら、一般人でも行ける? 帰ってこれる? ……答えは出やしない。
 情報が少なすぎるのだ。情報が無いのに確信なんかもてるわけが無い。やっぱ行って確かめろ、そう言う答えになるのか。
 結局行くんだし今は先を急ぎ、到着したときにどんなところか確かめればいいだけの話だろ。俺の考えは一旦まとまった。
「先を急ごうか」
 別にせかされてるわけじゃない。こんなことを考えるとどんなところかさすがに気になってしょうがないのだ。
 こんなことを言ったら王宮を見たときみたいに、子供扱いされるのかな。まっ口にはしないからどっちでもいいけどな。

 それから歩いて約1時間。俺たちは目標に到達しようとしていた。そこには一つの洞窟と……、
「あれは……魔物か?」
 魔物らしきものがいるのだ。「らしき」とつけたのは襲ってくる気配が無いからだ。見た目は完全に魔物だ。
 しかし、襲ってくる気配がまったく無いのだ。奴は本当に魔物か?
「……どうする?」
「とりあえず、様子を見ながら近づこう」
 襲ってくるのだろうか? それとも見た目はあんなんだけど本当は魔物じゃないとか。……よくわからん。
 やはり近づくしかなさそうだな。気を抜かないように行こう。いつ襲ってくるかも分からない。奴は俺たちに気づいているのか?
 微動だにしない。気づいていない? 気づかない振りをしているだけ?
「奴は俺たちに気づいているんだろうか?」
「……確かに少し不自然なところがあるね。動かないもんね、石みたいに」
 石? 奴は石像? 生きている? 
「正面から行って見るか。羽衣が言ったとおり、もしかしたら石かもしれない。正面から行って相手が動くかを見る」
 そう決めて奴のいるほうへ歩き出す。緊張が走る。手が震える。足がすくむ。俺は正直怖がっているのかも知れない。
 戦闘には慣れたと思っていたが実際はそうではないらしい。自分自身に言い聞かせていた部分もあったのだろう。
 ガンバレ……マケルナ……ってね。でもそれだけでは恐怖は抑えきれていない。この選択だって間違っていたのかも知れない。
 もし相手がいきなり襲ってきたら……羽衣やアデリアが攻撃を受けたら……そんなことが頭をよぎってしまう。最悪の事態は 避けたいが、俺がこの選択をしなかったら無傷だったのかもしれない。……でも実際にはこの選択肢が正解か今の時点で判るわけがない。
「……き、滝!」
「??? どうした?」
 俺はさっきからアデリアに呼ばれていたらしい。考え事をしていて聞こえなかったようだ。
「きっと滝だから、最悪の事態〜とか考えてたんだろう」
「……仰るとおりだ。正面から行くなんて選択をしなかったらとか、襲ってきたらどうしようとか、そんなことばかりだ」
「た〜き〜ちゃ〜〜ん♪ 元気だして行こうよ♪ 私達はそんなに簡単にやられないでしょ?」
 相変わらず緊張感がないというか……でもそれが羽衣らしいのだが。少しは緊張もほぐれたようだし、羽衣様々ってか。
「滝、自身を持て。お前はそれだけの能力を持っている……かどうかは分からないが、確実に力もつけている。
真月の血とは関係ない何かがお前の中にあるのだ。それを信じろ!」
 真月の血とは関係ない何かか……。確かに今の俺は真月の血に縛られているのかもしれない。世界を救う、パワーアップする、
そんなことばかり思っているからかもしれない。
「少しは肩の力を抜いたほうがいいぞ。このままでは参ってしまう。世界を救うのもいいが……自分も大切にって事」
 自分も大切にか。んじゃほどほどに抜かせてもらうか。
「ではでは、ほどほどにがんばろう」
 きっとこれくらいでいいんだろうな。ゲームとかアニメの主人公は強かったり、かっこよかったりだけど俺はそうじゃない。
 強くもないし、特別かっこいいわけでもない。でも……俺には心強い仲間がいる。きっとそれだけで十分なんだ。
 強くなくたって、かっこよくなくたって、守りたい大切なものがある。ずっと一緒にいたい仲間がいる。
 それだけ……それだけで良いんだ。俺は……それで強くなれる気がする! 前に進める!
「さぁ! 油断せずに行こう!」

 ……動かない。今の奴との距離は約100M。一向に動く気配が無い。やはり石像か何かなのか?
「……どう思う?」
「私は……う〜ん、わかんないかな?」
 羽衣にはあまり期待してないから……でもわかんないのが当然かもな。アデリアはどうだろう?
「ガーゴイル……なのかもしれない」
 ガーゴイル……。少しは知識がある。たしか……、
いつもは石像だが一定のときにのみ動く。どういう原理かは知らないがその昔、錬金術が盛んだった頃に作られたと言う説がある。
 賢者の石と言うものを石像の中に埋め込み動かしたという。日本ではあまり有名ではないが、海外ではいろんな著書なんかもある。
 他の世界ではガーゴイルは頻繁に見るものなんだろうか?
「いや、実際は始めてみる。本では何度か見た事はあるが」
てことは頻繁には出てこないということか。と言うかこの辺りの情報が無いからいても不思議は無いのだが。
「近づくしかなさそうだな。」
 俺たちは近づくことにした。石像である事を願おう。
 「「「…………」」」
 俺たちは言葉が出なかった。なんて言うか……その……あれだな。
「これは……石像だったって事か?」
「……おそらく」
 ……はぁ〜……なんか……疲れた……。
「……気を取り直して……洞窟に進もうか」
 俺たちは洞窟に向かおうとした。……そのとき!
「待たれよ……真月の血を受け継ぐ者よ」
 !!!!!!!!
 俺たちはまた言葉が出なかった。これは……ガーゴイル!!!!
 さっきまで動かなかった石像が急に喋りだした!
「……俺に何か用かよ。俺たちは急いでるんだ」
「この先は神聖なる大地に通じる洞窟になっています。今の貴方を通すわけには行きません」
「どういうことだよ!」
「言葉通りです。今の貴方を通すわけには行きません」
 俺には意味が分からなかった。今の俺は通れない? なぜだ!? なぜ通ってはいけない!?
  「……お前を倒せ……そう言うことか?」
「その通りです」
 話は簡単だった。ガーゴイルと戦う。それだけだった。
「ただし! 真月の血を受け継ぐ者一人で私と対峙してもらいます」
「いいだろう。俺が勝ったらこの先に「皆と一緒に」行かせてもらう。皆は下がっててくれ」
「でも……」
「ここは俺に任せてくれ! 真月の血と言われたからには俺がやらないとな」
 ……納得してくれただろうか?
「私はわかったよ〜。滝ちゃんにしかできないこともあるだろうし」
 さすがは羽衣だ。良く分かってらっしゃる。……と言うか羽衣はおれの意見を尊重してくれるだろうとは思ったけどな。問題は……。
「羽衣がそう言うなら……でも! 絶対に勝つのよ! この先に行くには勝つしかないようだしね。でも無茶はしないように」
 アデリア……。よし!
「話はまとまりましたか?」
 まとまったとも! やりますとも!
「分かりました。私の名前は……神聖なる大地の守護神! 名を……ガーゴイル! ……行きます!!!」
 そう言うとガーゴイルは眩い光を放ち始めた。その瞬間、ガーゴイルは石から目覚めたように動き出した。
「これが奴正体か。石はカムフラージュだったということか」
 空も飛べるようだし、圧倒的に不利なのかも。しかし……俺は勝つ!!!
「いざ! 勝負!」
 俺はガーゴイルに切りかかった。しかしあっさり避けられてしまった。今までの奴らとは明らかに動きが違う。
 今までと同じ考えでは勝てない。この戦闘中に何かを考えなければ……。
 そうこうしている内に奴も攻撃を仕掛けてきた。空から急降下してきた。は、早い!
  「クソッ!!」
 俺は何とか交すことができた。しかし、交すのが精一杯だ。反撃なんかできたもんじゃなかった。
 どうする……どうする……何か何か無いのか……。
「逃げているだけではわれには勝てないぞ!」
 確かにその通りだ。だが……くっ!!!!
「俺はお前に勝って! 先に進む!!」
 俺はガーゴイルに切りかかった。しかし、あっさり避けられる。やはり空を飛んでいるだけあってスピードはすごい。
 ……そうか! この手がまだある! 訓練は積んだんだ、今がそれを試すいい機会だ!
 俺は精神を集中させた。……訓練を思い出せ。訓練を積んだじゃないか。今やらなくていつやるんだ!!
「はぁぁぁぁ! くらえ! 斬撃破!!!!!」
 俺は勢い良く剣を振り下ろす。すると剣先に風の刃ができる。それを相手に向かって飛ばしダメージを与える。そんな技だ。
 俺の攻撃は僅かだが奴にダメージを与えたようだ。よし!!

 ……斬撃破……いったいいつの間に?
「滝はいつあんな技を身につけたんだ?」
「きっと、滝ちゃんなりに頑張ってたんだよ。それが結びついたんじゃないかな。滝ちゃんは私たちを守るために頑張ったんだよ」
「滝なりに……か」
 確かにそうかもしれない。さっきもいろいろ考えてたみたいだし、私たちを最優先に考えているのかもな。
 私たちもそれに答えないといけないかな。
「さぁ! 滝の勝利でも願おうか!」
「うん♪」
 滝……がんばって……応援してるから!!

「なかなかの攻撃だ」
 お褒めの言葉ありがとよ。でもあいつは余裕といった感じに見える。何とか大ダメージは与えられないのか!
 奴の攻撃は相変わらずのスピードと威力だ。避けるのが精一杯で……くっ……。
「さっきの勢いはどうした! そのままでは勝てないぞ!」
 何とか奴の後ろに回り込めれば……何か無いか……何か……そうだ! これだ!
 ゲームの知識ではあるが、試してみる価値はあるだろう。っていうかこんな知識しかないのだが。やらないよりはマシだろう。
 俺は奴に向かって突進する。そして剣を振り下ろす、だがあっさり避けられる。ここまでは予想通りだ。俺の狙いはここからだ!
 俺はそのまま茂みの中に姿を隠した。ガーゴイルは俺の攻撃を避けるために浮上したのだ。その間はガーゴイルは下は見えていない。
 そこを利用したわけだ。ここは森の中だ。そう簡単には見つからない。空からでは木が邪魔で見つけることはできない。
 だから自動的に下に降りて来る。そこを狙う! 一度でも大ダメージが与えられれば俺にも十分勝ち目はある!
「いい知識だ。しかし……それだけではわれには勝てない!」
 ガーゴイルは地上に降りてきた。今がチャンスだ! 俺は勢い良く奴の前に飛び出し、切りかかった。
 俺の攻撃は奴にヒット……と思いきやあっさり受け止めたのだ。
「その程度で私に攻撃が与えられるとでも思ったか!」
「……お前は勘違いをしている。俺の狙いはたった今! 果たされたんだ。俺はこの状況を待っていた!」
「なんだと!?」
 俺の剣の回りに先ほどの風の刃ができる。先ほどの倍以上もの風だ。俺はこの瞬間を待っていた。
 普通に攻撃しても奴には勝てないと思った。だが……ガーゴイルにダメージを与えるチャンスはあった。
それが今……ゼロ距離攻撃!!
 遠くからの攻撃ではかわされる可能性もあるし、威力も下がる。だがゼロ距離ならかわされる可能性も少なくなり、
大ダメージを与えられる。今の俺の知識、力ではこれが精一杯なんだ。だが確実にチャンスはめぐってきた。
 普通急に目の前から何かが現れれば避ける行動よりもガードしたり、目を瞑ったりしてしまうものだ。
 あいつは明らかに俺より強い。と言うことは当然ガード行動に出ると思った。ただガードするのではなく、攻撃を受け止める。
 あいつの強さならこれくらいできると判断した。それを利用させてもらったと言うわけだ。
「お前は俺の術中にはまったわけだ。こうなることは予想済みなんだよ!!」
 風の刃は更に大きくなり奴が剣を受け止めた手に纏わりつく。
「!!! はずれない!!!」
 この風の刃には特殊な効果もある。本来風を縛ることはできないが、この風の刃はそれを可能にした。
 周りの風の刃を中心に向けてやることで小さな檻の様な物ができる。今の場合剣の回りにその現象が起きているのだ。
 それを受け止め剣に触れているガーゴイルの手はその檻に入った状態となる。まさに思う壺といった感じだ。
「もちろんこれも考えの内だ。お前が逃げられないようにするためのな!」
「……だが、これだけではお前は勝てない。先ほどの技の威力ではダメージは与えられても、私は倒せない!」
 ……だろうな。大体予想はついていた。先ほども少ししかダメージは与えられなかったようだし、このままでは期待はできない。
 しかし! それにもちゃんと策はある!
「言っただろう? 俺の狙いは果たされたんだ」
 ガーゴイルは理解できないといったような感じに思えた。まぁそれもすぐに分かることだ。今からそれを実戦するんだからな!
 俺は力をため始めた。力の操作とかができればすぐに発動できるかもしれないが今の俺にはそんな技術は無い。
 力を自分でためるしかないのだ。……成功するだろうか? いや……成功する! そう願うんだ。
 これは初めての技だ。訓練は何度か積んだが、成功にはいたらなかった。でも成功すると願うんだ!
 俺がやらなきゃ……だれがやる!!
「はぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!」
 風の刃はどんどん大きくなる。俺の回り全部を包むほどの大きさになっていた。これくらいで十分なんだろうか?
 分からない。今の俺はきっと頭ではなく体で感じ取っているのだ。本能で動いているって感じだ。
「くっ!!」
 奴は少し怯んだようだ。やるなら今しかない!!!
「くらえーーーーー!!!!」
 俺は懇親の力をこめる。きっと今しかチャンスはない。これが失敗したら……負ける! そうならないために! 先に進むために!
 皆を守るために! 俺の力が試される! 今が……その時!!!
「風の刃よ! われと共に来たれ! 粉塵風絶斬!!!!!!」
 …………俺の意識は…………ここで途切れた…………。

 ……俺はどうなったんだろうか……
 ……負けたんだろうか……
 ……気持ちよさだけが体に伝わってくる……
 ……これは心地いいのだろうか……
 ……不思議な気持ちだな……
 起きれるか?
 どうだろう? やってみないとわからないが……。
 お前は起きなければならないと思うぞ。皆が待っている。
 皆? 待っている? そうか……皆が待っているのか……。
 起きれるか?
 やってみるよ。
 少しずつでいいぞ。急に起きると体に障るかも知れないからな。
 ああ。気をつける。あ……手は動く……様な気がする。
 当然だ。お前はまだ生きている。動いて当たり前だ。
 そうか……俺はまだ生きているのか……。ちょっとホッとした。
 お前はのん気なのか、心が広いのか良く分からないな。
 きっとのん気なだけだよ。俺はそんなに心は広くない……と自分では思っているからな。
 ははははっ! なるほどね。納得したよ。さぁ! そろそろ起きようか!
 ああっ! …………。

 太陽の光が俺に当たるのが分かる。風が俺のほほをなでる。それと……誰かが俺を覗き込んでいるのが分かる。きっと
「皆」なんだろう。
 風が気持ちいいな〜。心を落ち着かせてくれる良い風だな。あの二人にも呼ばれてるし、「あいつ」に言われたとおり起きないとな。
「……ん……滝ちゃ……滝ちゃん! 起きてよ〜」
「滝! 起きろ! 起きろ!」
 俺は薄っすらと目を開けた。アデリアと羽衣が俺を覗き込んで俺の名前を叫んでいた。
「……おはよう」
 間の抜けた挨拶だっただろうか? ……そうでもないようだ。
「ああっ……おはよう……」
「よかった……よかったよ〜……」
 心配してくれていたんだろう。かなり安心しきっている表情をしている。
「なぁ……俺はどうなったんだ?」
「覚えてないの?」
「技を発動した……、ここまでは覚えている。その後の記憶が途切れているんだ」
「滝はあのあと……、
滝の技は見事相手に命中。奴を倒した。しかし、その技の反動で滝は100Mくらい飛ばされ木にぶつかって倒れていたんだ。
それから1時間ほど眠っていた」
 なるほどね。俺は勝ったのか……勝てたのか……技は成功したのか……よかった……。
「すごく、すっご〜く心配したんだからね!」
「ああ……すまなかったな羽衣。でもあの場合仕方なかったんだよ。許してくれよ、な?」
 羽衣は頷き俺に抱きついてきた。後が怖いな……。でも・・・心配してくれる人がいるのはいいな。
 アデリアの目に薄っすら涙が浮かんでいるのが見えた。良い仲間と出会えたんだな俺は。
「立てる? 肩貸そうか?」
「ありがとう。んじゃ借りようかな」
 俺は羽衣の肩を借りて起き上がった。それと同時に逆側のほうからアデリアが肩を貸してくれた。
「アデリアもありがとう」
 アデリアは恥ずかしそうに頷き、元の場所まで戻ることにした。

 元の場所には待っていたかと言わんばかりの奴がいた。
「遅かったではないか」
 ガーゴイルか!? 生きているのか!? 俺は剣を構えようとする、だが体が思うように動かない。俺はその場に崩れてしまう。
 しかしさっき「奴を倒した」こう言っていたよな。なのに何故いるんだ!? 勝ったんじゃないのか!?
「剣を収めよ、滝。私は負けたのだよ。君が勝ったんだ」
「……どういうことだよ。俺が勝ったのなら何故お前はここに生きているんだ!?」
「私は真月の血を受け継ぐ者を試すために存在している。故に先に進むには私の許しを受ける、この必要があったのだ。
その許しを得るためには力を試す必要があったんだ。そして見事に滝は勝ったのだ。
私が生きている理由は……石だからだろう」
 生きている理由はなんとも言い難い……が、  なんにしても俺が勝った事は事実のようだ。よかった……。この言葉を勝った本人から聞くのも微妙な気分だがまぁいいだろう。
「んで、俺たちは先に進んで良いんだな?」
 これが一番重要だ。今になって通せないとか言われたときには狂っちまいそうだからな。
「もちろんだ。滝にはその実力がある。この先に行くということは……後は中で聞くだろう」
 中で聞く? 誰かいるのだろうか? 実は先遣隊がいたりして。なぁ〜んてな。そういえば先遣隊のことは……聞いてみよう。
「一つ質問がある。いいか?」
 ガーゴイル(今は動ける状態)は頷いた。
「何度かここに先遣隊が来たと思うんだが、何か知らないか? 誰一人として戻ってこれなかったそうなんだ」
「……それは真月の血を引いていないからだ。皆は気づいてはいないかも知れぬが、この森は簡単に言うと「迷いの森」なのだ。
この森を抜ける……すなわちこの場所にたどり着くには一つの鍵が必要なのだ。それが真月の血。
他のものは真月の血を引いていなかったためこの場所にたどり着けずに……。だが滝たちは違う。真月の血を受け継いでいる。
その血が無意識ながらこの場所に誘導した、いや……この空間への扉を開けたといったほうがいいだろう」
 そっか……やっぱり真月の血が関わっていたんだな。だから先遣隊の皆はここにたどり着けずに……。きっと皆はもう……。
「そんな事情があったのか……。陛下は何も知らない……。報告の必要があるな、皆のことを……」
 アデリアが一番辛いのかもしれないな。なんでも先遣隊のメンバーの中にはアデリアの部下なども居たそうだ。なのにこんな
結果に……。
「滝ちゃん……アデリアずっと思いつめてたんだよきっと……」
 だろうな。羽衣も同じ考えだったのか。俺と羽衣はきっとアデリアとの距離が少しあったんだと思った。
 この距離をつめて、励ましてあげたい。これが俺と羽衣の精一杯の……。
「皆はさ、きっと幸せだったんだと思う」
「私もそうだと思うよ! 元気だして……ね?」
 俺たちはこれが精一杯だった。傷つけないように……元気づけられるように……。これ以上この話題には触れないようにしよう。
 とりあえず話をガーゴイルのほうに戻そう。
「んで俺がいるからここまで無事に来られたということか」
 ガーゴイルは頷く。この星では真月の血は特別なんだということをいろんな所で実感している。
 地球ではそんなことまったく知らなかったことなのに、エクストランに来てアデリアとあっていろいろ知った。
 それでも今回のように知らないことが多い。未知……一言で片付けるとこんなところか。
「では通るがいい! 真月の血を受け継ぐ者とその仲間よ!」
 俺たちは先に進んだ。洞窟の中は案の定真っ暗だ。明るい洞窟も嫌だけど。
「どこまで続くんだろう……」
 洞窟に入って10分くらい経ったときにポツリと声を出した。見た感じではそんなに大きな洞窟ではない。だが中に入って
わかったのだが、意外に広かった。もしかしたらこれも真月の血の効果? 実際は謎だけどな。
「あっ! 光が見えてきたよ!」
 羽衣がそう言い、そのほうを向くと確かに光が差し込んでいた。この先には何があるのか……。
「出るぞ!」
 アデリアを先頭に歩いていた俺たちは(俺はしんがりを担当していた)洞窟から出た……。

 光が目に入ってくるのが分かる。まぶしくてすぐには開けられそうに無いって感じだ。ここはどんなところなんだろうか?
 真月の血をもつ者のみが入れる聖地……神聖なる大地。今目の前にはそれが広がっているんだ。
 おっ! 目が開けられそうだ。やっと光に慣れたか、目を開けたら新世界が広がっているかもな。俺はゆっくり目を開けた。
 そこには……。
「うわぁ……すげぇ〜……」
 そこには……はじめて見るような景色が広がっていた。
 回りは森に包まれていて、真ん中に泉があって、光が差し込んでいて、何と言えばいいんだろう……そう、神秘。神秘的な場所だ。
 地球で言うと……世界遺産に登録されてそうな場所……かな? とにかく神秘的できれいな場所だ。
 言葉ではこれ以上は表せないような感じだな。
「ここが……神聖なる大地……」
 俺たちは圧倒された。明らかに他の場所とは違う雰囲気、明らかに違う景色。何をとっても不思議な場所だ。
 その場所に俺たちがいる。この場所を目指して俺たちは来たんだ。
「ところで……ここで何をするの??」
「「…………」」
 何をする……何をする……何をする!? 何するんだ!?
  「ねぇ滝ちゃん。何すればいいの??」
 あぁ〜……何するんだろう……この場所に来ることしか考えてなかったから何にもわかんない……。どうしよう……。
「と、とりあえず歩いてみよう!」
 うわ〜……めっちゃあせってるよ俺……。真月の血で何かわかんないものかね……。とりあえずそこらを歩いてみよう。
 俺は泉のほうに行くことにした。俺が一番最初に見たものだ。広さは無いが、水が透き通っていてきれいな青色をしている。
 底が良く見えているといった感じだな。俺は泉を覗き込んだ。すると!!!!!
「なっ! なんだ!?」
 底の方から泉を満たすほどの光が上がってきたのだ。普通に考えると下から光が出てくるなんてありえないと思った。
 だが、そんなことを考えている暇もなく光はどんどん上にあがっていき、泉を覆った。そこから……。
「どうした滝!?」
「何かあったの〜?」
「「…………」」
 最近は言葉を失うことが多いな。いろんなことに驚いたりしてるからな。でも……驚かずにはいられないんだろうな、人間としては。
「久しぶりだね……滝!」
 う〜ん……久しぶりね……。う〜ん……どなた? 俺会った事なんてあったっけ? と言うか……どうやって出てきた!?
「って! お前誰だよ!? 俺のこと知ってんのかよ!? てか、どっから出てきたんだよ!?」
「一気に質問するのはやめてくれないか? 一度には答えられないから」
 もっともな回答だな。きっと自分でも分かっていってたんだと思う。こういう場合のお決まりみたいなもんだからな。
「僕の名前は……真月 十魔。覚えてるよね? あの晩のこと」
 あの晩……十魔……。そうか! あの晩て言うのは十魔と合ったときのことか。
「当然僕は君の事を知っているよ。僕は泉から出てきた……う〜ん……ちょっと違うかな……。あっ! そっか!
滝が泉を覗き込んだから泉の効果が増して出てこれることができたんだ。この説明が正解」
 なんか自分で間違っといて自分で正解言ってるよ……。正直良く分からんな。
「ん!? 十魔!? あの十魔か!?」
「そうだよ。思い出した? 久しぶりだね。こうして会うのは初めてかな??」
 ……十魔の印象が明らかにちが〜う!! 前話(真月の血編 其の壱)を読んだ方には分かると思うが、イメージがぜんぜん違う!!
なんていうか……こう……ちょっとツンツンしてて、言葉使いが荒くて……なんていう印象があるのだが。
 僕!? 僕って言ってる!? あの時は確実に俺って言ってたよな!? 絶対に「かな??」なんて言葉使いそうに無かったよな!?
 なに!? 何がどうなってんの!? 本当に十魔か!? だとしたら前に会ったのは!? でも以前にあったって言って
るって事は……。
 あのときの十魔のこと……だよな? あ〜と……え〜と……どういうこと??
「本当に十魔か? あの時と様子がえらく違うみたいだけど……」
「そっか……陽の時に喋るのは初めてか……」
 陽の時? はい? なんだって?? 俺は頭の中がハテナだらけになっていた。
「そういえば滝は真月の血についてあまり知らなかったんだね。まぁ幾つかかいつまんで説明するね。なるべくちゃんと聞いててね。
アデリアさんと羽衣さんも聞いててくださいね」
 アデリアと羽衣の事も知ってるよ……。アデリアのことはあの時少し話したが、羽衣のことは何で知ってるんだろうか??
 まぁその辺りの説明もあるかもな。

 陽と陰について
 意味としては言葉通り。日に当たる部分と影の部分がある。本来活動しているときは陽のときで、そのとき陰は眠っている。
 ですが、たまに活動が逆転してしまうことがある。それがあなた方で言う「二重人格」です。
 陰は行動や言動が激しすぎる故に陽の部分に押さえ込まれている。だから普段は陰は表舞台には現れない。
 陽が日常を動かす重要なエネルギーと言うことです。その陽のエネルギーが陰のエネルギーより下回ったとき陰と陽が逆転する。
 真月の血の場合、陽が滝の意識。陰が私、十魔の意識となるわけです。前で言って事だと、普通の血が陽で真月の血が陰。
 こういう言い回しになります。真月の血の場合は少し特殊です。滝の場合すでに陽と陰を持っている。それはアデリアさんや、
羽衣さんと同じ。ですが、真月の血にもまた陽と陰があるんです。簡単に合計すると、滝さん、陽の十魔、陰と十魔。
 この3つの人格があることになります。これは普通ではありえないことなのです。それを普通にしているのもまた真月の血なんです。
 これを分析すると、「真月の血は陰と陽を自由に入れ替えることができる」こう言う事になるんです。
 普通にしている真月の血のストッパーをはずすことで、不可能を可能にすることができます。
 その経緯などは別に説明することはいいでしょう。では次に行きます。

 武具と宝珠について
 これは封印についてのことです。武具はもちろん通常の戦闘で使用することが可能です。効果は絶大です。
 宝珠の方ですが、これが封印に必要なものです。これを全てそろえて約束に地で行動を起こす。
 これについてはこれ以上の説明は要らないですよね? あの紙に書いてあることが全てです。次ぎ行きます。

 七夜について
 このことを教えるには制限があります。私が教える以外は自分で知る以外に方法はありません。
 七夜は七つの世界のこと。
 七夜は七つの夜のこと。
 七夜は七つのある物のこと。
 七夜は七つの伝説のこと。

「私の説明は以上です。あとは自分で感じ取ってください。この説明の中に出てこなかったことは貴方の能力の開花
……と言うことです」
 まずは陰と陽。人格のことを表す用語と言うことになるな。ストッパーをはずすことで不可能を可能にすることができる。
 きっとこれは真月の血を引く俺にしかできないのだろう。
 武具と宝珠。これは紙に書いてある通りか。集める他ないっと。問題は……七夜だ。初めて耳のする言葉。
 七夜は七つのことを表している、このことは分かった。だが、制限があるといっていた。これはいったい……。
「滝ちゃん、わかった?」
「ある程度は。アデリアはどう?」
「理解した。……だが、分からない点も多数だ」
 結局謎の部分はあるという結論かな。
「アデリアさん! 羽衣さん! 少しこちらへ……」
 いきなりだな、おい! まぁいいけどよ。アデリアと羽衣は何かを言われているようだ。俺のいる場所からじゃ聞き取れなかった。
「それじゃあちょっと行ってくるね」
「は? どこへ?」
 アデリアと羽衣はちょっとと言い残して泉の奥へと消えていった。なんなんだろうか……って言うか十魔が言ったことだな絶対に。
「あいつらはどこに言ったんだ?」
「一言でパーアップでしょうか。これから貴方もするんですよ、パワーアップを」
 そういえばそのつもりで来たんだった。すっかり忘れてた。
「泉に手をかざしてください……。……行きます!」
 あ〜〜……。なんだろう、気持ちいい。何かが流れ込んでくる。
「これがパワーの源ですよ。」
 俺喋ってないのにわかるのか?
「はい、分かりますよ。私は声を出して受け答えしてますが」
 真月の血はすごいんだな。俺にもこんな能力いずれつくのかな?
「どうでしょうか。貴方しだいですね。……終わりました。いつの間にか目を閉じてますが開けていいですよ」
 何故目を閉じるんだろうか? 気持ちい時はたいてい……まぁいいか。ちょうどアデリアと羽衣も戻ってきたみたいだ。
「パワーアップについてはこれで以上です。後は実際に体験していただいたほうがいいと思います。
では次の話、GMウイルスの話をしていきましょう。」
 もう次の話かよ! パワーアップについてもっと聞きたかったのにな……。
「滝と羽衣さんに聞きたいのですが、地球で奇妙な事件起きませんでしたか? あっ! もちろん日本のことですよ」
 奇妙な事件か……。そういえばあの事件が……。
「一個だけ思い当たる節がある。その事件は被害者が自分の喉を自分で掻き毟って起こったんだ。詳細は何一つ分からない。
このことだけしか分かっていないんだ。俺的にこれは奇妙な事件だと思っている」
 羽衣もおかしいと付け加えてくれる。果たしてこれのことなのだろうか?
「おそらくそれは、GMウイルスが関連しています。あなた方はすでに知っていると思いますが、GMウイルスは私、
真月の血から作られたもの。以前にGMウイルスが持ち出された、ここまでは皆知っていると思う。問題はここからです。
それから数年たった、ある日その持ち出した人間が自分にGMウイルスを打ったのが始まり。そこからいろいろ狂いだした。
その人間は苦しさのあまり意識が朦朧としながらもいろいろな所を彷徨い続けた。その結果、行った所々でGMウイルスの元となる菌を
残していってしまうという事態が発生した。その結果が今に至っている。増殖……フクシュウ……。
それは日本にも来た。そしてそのような事件が起こった。同様にこの星、エクストランにも。形は違うがフクシュウと言う形で
事は起きた。それが、3年前の争い。そのときは終結したように見えた……だが! 3年前の争いは終わってなかった。
今それが着実に進行している。これが今の了見です。」
 あの事件はGMウイルスのものだったのか。日本にもGMウイルスが……。
「他の星ではどうなんだ?」
「他の星では今のところ事件は起きていないようです。もっとも……ラグーンは亡くなってしまいましたが」
 なんかところどころ十魔が言いよどんでるような気がする。何かを隠してる? ……まぁいずれ分かるだろう。話を戻そう。  そういえばそうだった。ラグーンはGMウイルスに殺されたんだ。……ん? と言うことは……ラグーンが
 GMウイルスを持ち出したわけではないのか? さっきも「持ち出した人間」と十魔も言っていた。
「十魔。GMウイルスを持ち出したのは……いったい誰なんだ? きっとそいつが全ての元凶。そして……その奴は生きていて、
GMウイルスを打ち込まれた者の全てを支配している。違うか?」
「滝の言うとおり、そいつが元凶でまた全てを支配している者。持ち出した奴は……何者かは分かっていない。なんせ奴は……
姿をいろいろ変えられるらしい。だから姿を突き止めることができていないのだ」
 姿を変えられるか。でも元は人間なんだよな? と言うことは他の人間に姿を変える? それとも魔物?
 いやもっと他のものかも……。
「その奴はどこいるか場所すらつかめていないのだ。つい先日この星にて強い波動を感じた。おそらく……開放してしまったんだろう。
古代兵器を!!」
「その通りです。2日前、例の謎が解かれました」
 アデリアが説明してくれている。んじゃちょっと羽衣に聞いてみるか、話違うけどな。
「なぁ羽衣。ちょっと話し変わるんだけどさ、パワーアップってどうなったと思う??」
「私も正直実感が無いの。アデリアにも聞いたけど実感無いって」
 う〜ん……謎だ〜〜〜!!!! っとしている内に説明が終了していた。
「なるほど。そう言うことがありましたか。アデリアさん有難う御座います。これで次に行く道が生まれました」
「「「次の道??」」」
 皆の頭にハテナが浮かんだような気がした。
「まずは、聖なる焔に行って頂きます」
 やっぱりそうなるのか。宝珠を取るためにも武具をとらなきゃいけないから、ここに行かなきゃならないんだよな。
「いったいどこにあるんだ? 地図はあるけど……。ハッキリとは分からないから」
「それはこれからです。その前に滝に決意表明をしてもらいます。滝は真月の血を引いていると言う理由でここまで来た。
滝の意思とは関係なく。滝は今! どのように思っていますか? 滝の意思表明をしてください」
 確かに最初は真月の血がどうとか言われてきたんだが、徐々に俺の気持ちは動かされた。
 アデリアが犠牲になってアリアから逃げたとき……GMウイルスのことを知ったとき……王都を見たとき……アデリアにかけられた言葉。
 ここまで来たからとか、仕方ないからとか、そんな気持ちはもうどこにも無かった。単純に世界を救いたいと思っている。
 本音を言ってしまえば確かに真月の血のことも多少ある。やっぱり真月の血が原因だし……。でも、何度も俺は決意してきた。
 その決意に迷いは無かった。今回も……もちろん迷いは無い!!
「俺は仲間と共に! 世界をあるべき姿に戻すことを誓う!!」
「もちろん私も付き合うぞ滝! われわれは仲間だ!!」
「がんばろうね〜滝ちゃん!!」
「……分かりました。ガーゴイルが言っていたことは本当だったようですね。いいでしょう。決意表明受け取りました。
これからの逆戻りは許されません。滝には世界を救う義務があります。やってくれますね? 滝とその仲間達!」
「「「おう!!!!!」」」
 おそらく簡単な問題ではないんだろう。もっと複雑化していく。俺はそう感じる……。  そのとき俺たちの体から力がみなぎっていた。これは?
「あなた方のこれからの力です。これがパワーアップの正体です。滝の場合は力の解放。アデリアさんと羽衣さんは力の注入
をしました。
 ですがこの力が全てではありません。力の使い方でいろいろな方向に向かいます。だから……貴方達はまだまだ強くなる!」
 これが力の正体。決意表目にパスワードがあったらしい。俺は見事にそれを開いたのだ。
 決意表明の内容ではなく、心の中の決意だと十魔は言ってくれた。その力を得るだけの決意をしたということになるのだ。
 俺は間違ってはいなかったようだ。
「ではこれから聖なる焔に向かいます」
 向かいます? 十魔も一緒に来るのだろうか?
「私は本来滝と同化しています。今私がこのような姿でいられるのは、この特殊な泉のおかげなんです。
この泉が滝と十魔の魂を分離しているのです。ですから、この泉から離れると私は滝と同化することになり、
今までどおり一緒に行動することになります」
 なるほどな。そういえば十魔と俺は一体だったのをすかっり忘れてた。十魔が見えるようになったのも、この泉の近づいたからか。
 こうして喋ってると……なんか不思議な感じなんだよな、普通は。
「でも、どうやって行くんだ? さっきも言ったけどハッキリとした場所は知らないぞ」
「ここは神聖なる大地です。ここでは不可能を可能にすることができるんです。魂の分離ができたようにね。
ここから聖なる焔まではワープ移動をします」
「「「ワープ移動??」」」
 言葉が重なった。う〜ん、きっもちいい〜♪ ……なんて事はどうでも言いとして、ワープ移動なんてできるのか?
 不可能を可能にするって言ってもこればっかはどうかと思うのだが……。
「滝たちは時空の歪を通ってこのエクストランに来た。ワープ移動とは時空の歪を通るということ。
あの時少し説明を聞いてたみたいだけど、詳しい話を少しするから」

 時空の歪について
 この世界の人たちは、この空間を「生物が感じる時間」と呼んでいるみたいだけど方向性は間違ってはいない。
 時空の歪には時間がない。時計を持って言ったら一目瞭然だと思うが、もちろん動かない。この空間は……閉鎖空間と言う。
 時空の歪と言うのは出入り口のこと。出入り口で挟まれている中が閉鎖空間になっている。この閉鎖空間は
一定条件化で無いと発生しない。皆は月と考えているが実際は少し違う。詳しくはいえないが「七夜」に関係している。
 まぁ聞いた話と理論的には間違っていないから問題はまったく無い。

 と言うことらしい。閉鎖空間か。また難しい用語だことで。
「んで、俺達はその閉鎖空間を使って聖なる焔に行けるんだな?」
 十魔が頷く。ついに武具との対面と言うわけか。もともと真月家が残したものとはいえ、俺は何も聞かされていなかったからな。
 どんなものか興味があるな。
「十魔ありがとうな。陰の十魔にもよろしく言っといてくれよな、言える状態なら」
 十魔はニコッと笑った。そして俺達は泉の近くに集まった。これからワープに入るらしい。これも泉の力を使って、ワープ移動
をするらしい。でも実際に行うのは十魔のようだ。これは俺にもできるようになることなのだろうか? これがいつでもできれば
便利なのに。
「では皆さん、行きますよ。私はここから離れると消えます。ありがとうございました。世界をお願いします」
 俺達も十魔に向かい「ありがとう」と一言言って光に包まれた。

 これは俺達にとって二度目のワープだ。聖なる焔はどんなところだろう? 何があるんだろう? 希望は尽きない。
 俺達は進む。俺達はこの道を選んだのだから……。


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*注:自主制作な為、矛盾点や脱字、誤字などが存在しているかもしれません。そういった点があればお知らせいただけると幸いです。

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