第四話 〜目の前の出来事〜■ 第四話 〜目の前の出来事〜■


All human existing in the world. Hear a voice of God.
人は力を欲する。
ある欲望を追い求める人間は、やがて力に飲み込まれる。

人は力を欲する。
ある守りたいものがある人間は、やがてそれを守りきれる。

力の使い方は様々。
あなたはどのように使うのがいいと思う?
                       Ustegnihs.T.Trans
Where does the world begin to move towards? What does the world plan? All began from here…….
All truth on darkness. You yet know nothing.
Let's tell all truth here.



 ありがとう。
 お前か、いや……「アデリア」と呼ぶべきかな。
 う〜ん……いつもどおりお前でいいよ。
 そうか? せっかく良い名前があるのに。
 でも……やっぱりありがとうだね。
 お前ががんばった結果だろ? 俺は手助けをしただけ。……って言っても巻き込まれてたけどな。
 フフフッ♪ 前と変わらないな〜♪
 前か……。昔に俺はお前と会ったことが……あるんだな。
 ……あるよ。でも私も貴方も覚えていない。いわば架空の出来事かな。
 今はどっちでもいいさ。いずれ分かるんだろ? 時が来れば。
 時が来ればね。でもそのときがきっと近づいてきてると思うよ。
 近いうちに全てがわかるってことか。前にも言ったけど俺はあせらないさ。まだ俺達は時間がある。
 私も……貴方なら信じられる。貴方に会うのはこれが最後になるだろうけどね。
 アデリアに心が戻ったからか。
 そう……。会えないのはちょっと淋しいかな……。
 「会えない」っていう表現は決定的に間違ってると思うぞ。俺が思うに「いつでも会える」これが正しい。
 そっか……。「いつでも会える」か……。いい言葉だね♪
 俺達はいつも一緒だ……。

「よろしくなアデリア」
「??? どうしたの急に??」
「いや……気にするな」
「私も仲間に入れてよ〜」
 賑やかになった。羽衣が二人になったようなそんな感じ。楽しいに越したことは無いんだけど……緊張感がないというか何と言うか。
 でも二人とも頼りになる奴だからいざって時はやってくれるだろう……たぶん。
「そういえば滝ちゃん。このまま真っ直ぐ行けば聖なる焔に行けるの??」
「と思う」
 聖なる焔の場所の想像がつかない。焔ってなんだろ?? 聖なるとは何が聖なんだろう??
「こっちであってると思うよ。ほら地図の場所ここじゃないかな」
 そういえば地図があったのを忘れてた。地図によると……ここか。あと少しじゃないか。
「あと少しみたいだな」
「ここには何があるのかな……。ちょっと不安かも……」
 アデリアにとっては初めて……って訳じゃないにしろ状況が変わっているのも確かだから不安が大きいのかもな。こういうときこそ
俺のフォローの見せ所だ。
「大丈夫だよアデリア。滝ちゃんが私達を守ってくれるもんね?」
「えっ……あっ、も、もちろんだ!」
「ねっ♪ だから安心。そんなに不安がんなくても大丈夫だよ」
「ありがとう羽衣♪」
「うん♪」
 ……出遅れたのかな……。…………。
 き、気を取り直して……アデリアの不安が取れたならそれでいいさ。
「滝もありがとうね」
ア デリアが俺の耳元で囁いてくれた。救われたな、俺が。……何やってんだか。俺がフォローされちゃったよ。でも約束したからには
全力で守ってやるさ。
「どうしたの滝ちゃん??」
「いやいや、何でも御座いませんよお姫様。全力で守らせてもらいますよ。……二人ともね」
 いや〜こんな恥ずかしいセリフ前の俺なら絶対に言わなかったな。成長……だったらいいな。いや! 成長だと信じたい!
 なんとなくね。

 地図によるともうすぐだな。本当に今度は何があるのか。あの時は十魔がいた、そう言う理由もあって安心できたのだが、
今回はそうじゃない。知ってる奴はいない。ましてや誰も踏み入れない場所。禁断の地、真月の血を受け継ぐ者のみが許された場所。
 俺が立ち入っていい場所なのだろうか?? 十魔は色々と知ってた。でも俺はまるで無知だ。時空の歪も閉鎖空間も、
十魔のことも真月のことも……世界のことも……。俺は何も知らない。真月の歴史について何も聞かされていない。
 でも十魔は俺に受け継がれた。
 それは何故だろう。今更ながら気になるところだ。何故俺が吸収した? これは偶然? それとも必然? 十魔は何も言わなかった。
 いや、十魔に決定権は無かったのだろう。単に俺に真月の血の素養を多く含んでいた。それがおそらく理由、俺が考える理由。
 他にはどんな奴が十魔を吸収して受け継いできたのだろうか……。俺だけではないはずだ。そいつらは皆このようなことをしたのか??
 でもそうだとしたらGMウイルスはとっくの昔に消滅しているはずだ。と言うことは……これから行く数々の場所は俺が最初に
踏み入れる?
 いや、その前に十魔が来ている……。単純に考えればそうなるのだろう。十魔は以前にここに来ていた。最後に行き着くのは十魔か。
 じゃあ十魔は一人でここに来たのか? それとも今の俺のように仲間がいたのだろうか?
 どちらにせよ俺は十魔と同じ道筋をたどっている……と思う。だとすれば十魔が言っていた「七夜」と言う言葉もいずれは分かる
ようになるのだろう。……全ての場所に行ければね。今は目の前の難関、聖なる焔に行くことを専念しよう。
「この扉の奥みたいだな」
 俺達は奥の扉までたどり着いた。地図ではこの場所を示している。そしてそこには扉がある。この奥が……聖なる焔!!
「……ゴクッ……準備は良いか?」
 自分の喉がなるのが分かった。それがかなり大きな音に聞こえる。手もおそらく汗ばんでいる。背中からも変な汗が流れている
感覚に陥る。……開けていいのだろうか……。そのとき、扉に手をかけた俺の手の上に二つの手が重なるのが分かった。
「大丈夫。私達がいるよ」
「滝ちゃん、行こう♪」
 俺の心の支え。それがあるから前に進める、扉の奥に進める。
「よし、行こう!!」
 俺達は扉をゆっくりと開ける。扉は重かった。何年何年も開けていないもののように思えた。やはり長年この場所に訪れた者は
いないようだ。……緊張が走る。扉の奥は未知の世界。俺達は扉の奥に一歩を踏み出した……。

「う〜ん……どこだろうな、ここは」
「未知の世界ってのは合ってるね」
「私たちここ進むの? と言うか進めるの?」
 俺の推理では十魔以外の者(十魔の仲間を含む)は立ち入っていない場所。いわば未知なる世界。……それが俺の考え。
 結果的には当たっていたといって過言ではない。でも……こう見せ付けられるとなんと言っていいのやら。
 これ以上の言葉が見つからないと言うか何と言うか……。とにかく状況を説明するとしよう。
 それは扉を入ってすぐに目に入った。それは……草。意味不明に成長した草。ただの雑草。意味不明に成長したただの雑草。
 ……まぁそれが全てなんだけど……。
「俺達は今どこにいる?」
「おそらく聖なる焔だと思うよ」
「私もそう思いまーす」
「じゃあ目の前にあるのは何だ?」
 きっとこう言うだろうな……。単純に……。
「「「雑草」」」
 俺達の声が揃う。その通りだからしょうがないが……本当にそれしか見当たらないもんな……。どうしたもんかな。この中を
突き進んで行くのか? しかし目的の場所が特定できていない。聖なる焔の中とはいえ目的の場所はひとつだ。適当に歩いてそ
こにたどり着ける保証はどこにも無い。かと言ってこの場所にとどまるわけにも行かない。じゃあなぎ払っていくか? それも
どうかと思う。
 これが本当に雑草なのかと言うところも不確定だ。見た目はただの雑草、大きな雑草。だが、ここは聖なる焔。
 何か特別な意味があるのかもしれない。なぎ払ってからでは遅いという事もある。じゃあ他に選択義は??
「周りを見渡しても通れるような道は無いよ、滝」
「うん。どこかに抜けられるようなところも無いしね」
「場所違いってことは……さすがに無いよな」
 地図はこの場所を示してるし、あからさまな扉はあったし。……手詰まり。さてどうしよう。

 空を見上げてください

「えっ?」
「何の声かな?」
 聞こえたのは俺だけではないようだ。空を見上げてください? 一体誰の声だろう。って言うかどこから聞こえてきたのだろうか?
 ここに人がいるとは思えない。では十魔の声? それとも違う。十魔の声ではない。じゃあアデリアの心?
 それも無いな。あの時アデリアは会えないという表現をしていた。それに声がまったく違う。この声は始めて聞く声。
 従うか? ……どうするかは決まってるんだけどな。
「んじゃ見上げてみようか」
 二人は頷く。誰の声かは知らないが、ましてや敵か見方かすら分からないが……従った良いような気がした。
「「「せーの!!!」」」
 一斉に空を見上げる。……青空が広がっている。言い忘れていたが扉の奥は屋外であったのだ。だから雑草が伸びていたんだと思う。
 洞窟内では育たないだろうからな。とまぁ空を見上げたのだが……青空があるだけ。雲ひとつ無い晴天。……ん?? あれ??
「違和感ないか……?」
「私もそう思っていたところ。洞窟の外の空とは明らかに違う気がする」
 なんだろう、何が違うんだろうか?

 前を向いてください

「まただ」
「私にも聞こえたよ」
 空を見上げても何も無かった。……今回は信じられるのか? 微妙だな。同じように何も無い可能性が高い。なぜなら目の前には
雑草が生い茂っていたからだ。目線を前に戻すか? この二人はどう考えてるんだろうか。
「私は・・・滝に任せるよ」
「じゃあ私も〜」
「……楽でいいよな」
 責任重大だよ……な。選択義が無かったのも確か。行く道が無かったのも確か。……信じる以外に無いんだろうなきっと。
「んじゃせーので目線を前に戻すぞ。……せーのっ!!」
 俺達は目線を戻す。
「……この声は見方だったのかな??」
「どうなんだろう? 滝はどう思う?」
「罠……かもしれない」
 雑草が道を作ってくれた。こっちに来いと言わんばかりに道を作ってくれた。……信じていいのか? 見方なのか? 罠なのか?
 導いてくれているのか……。どちらにせよ後戻りはできない。進むっきゃないだろ。
「俺達に後戻りの文字は無い。前に進む。罠だったら潜り抜ける」
「もっちろんだよ〜。行く気満々だよ」
「私も大丈夫だよ。皆一緒だもんね」
「んじゃ行きますか。目的の場所へ」
 道は真っ直ぐ続いていた。ただ真っ直ぐに。曲がり道はまったく無い……今のところは。このままで本当に目的の場所にいけるのか?
 正直不安だ。あんなことは言ったが、後戻りできるならしたい。回り道があるならそうしたい。安全な道を行きたい。
 羽衣もアデリアも傷つくのは見たくない。まぁ俺が守るからあれなんだが。でも実力としては確実にアデリアのほうが上だろう。
 子供の頃から特訓を積んでるみたいだし、王宮にも出入りしている。さらに昔の力? といっていいのか分からないが、
それが戻ってきた。今一番の進化を遂げているだろう。あと十魔の力の注入とやらもあったな。十魔の力と言うのは……、
想像がつかないな。俺が実際戦って分かったけど今までとは格段に違う。羽衣もベリウス相手に一人であれだけの時間持ちこたえていた。
 羽衣は正直運動は苦手と言うほどでもなかったが、決してできるほうじゃなかった。にも関わらずあれだけ動けていた。
 十魔の力と言うのは正直底力が見えない。だからこそ不安と言うのもあるかもしれないが。俺のできないことを二人に補ってもらう。
 逆に二人ができないことを俺が補う。これが俺の考えるベスト。……でも本音を言うと、できるだけ守ってやりたいよな。
 俺にとってはやっぱり一番大切な人たちだから。
 ……って言うか何気に脱線してしまったな。本筋に戻るか。
「どこまで続くのかな? かな?」
 一番の謎だな。それが分かれば俺も苦労は無い。
「それもそうだよね。滝は真月の血で何か分かったりはしないの?」
「う〜ん、どうなんだろう。十魔がちょろっと言ってたには他にも能力はあるみたいだけど、今の俺では無理みたいだ」
「お弁当食べたいね♪」
「そうだな、ピクニックみたいで……っておい!!!」
 俺は羽衣の頭をぐりぐりする。昔から羽衣が何かするとよくやったもんだな。
「ご〜め〜ん〜。場を和ませようと思っただけなんだよ〜」
 どうだかな。だが根のつめすぎって言うのもよくないのは確かだ。しかし、緊張感がなさ過ぎるのも問題だ! 緊張感を持て〜!
「まぁまぁその辺でいいんじゃない? 羽衣も反省してるよ、きっと」
 羽衣は激しく首を縦に振る。まぁアデリアがそう言うなら……。
「羽衣、場を和ませるのはいいことだ。根のつめすぎはよくない。それは俺が一番よくわかってるのかもしれない。でもな?
俺は気を使ってほしいとは思わない。羽衣の気持ちは正直うれしい。でもそれは羽衣が無理してるってことにもなる。
俺はそんなに頼りないか? 俺は羽衣もアデリアも守ってやる自身はある! まだまだ非力だけど、まだまだ知らないことが多いけど、
羽衣とアデリアを守りきる自身だけはある。だから無理に和ませようとしないで、「一緒に」和んでいけばいいんじゃないのか?」
「う、う……ぅぅぅ……うわぁぁぁ〜ん!」
「えっ!? あの、その……」
 き、きつく言い過ぎたのかな? どうしようどうしよう(汗)。オロオロ……オロオロ……。
「羽衣……」
 アデリアがやさしく羽衣を抱きしめる。
「不安なのは羽衣だけじゃ無いんだよ。私も不安。でも私には羽衣や滝がいる。だからがんばれるの。「一緒に」いるからがんば
れるの。無理しないで行こう? ね?」
 羽衣は我慢してたのか……。昔から我慢して我慢して、一人で泣いて、俺が慰めて……。でもいつの間にかそれはなくなっていた。
 羽衣は俺の前じゃ泣かなくなった。その理由がようやくわかった気がする。

 俺達は昔からよく近くの公園で遊んでいた。俺と羽衣と……あれ? まだ一人誰か居たような……まぁいっか。とにかく俺と羽衣は
小さい頃からの幼なじみなのだ。
「まってよ〜。追いつけないよ〜」
「早くこいよ、羽衣」
「羽衣ちゃん早く早く〜」
 この公園は当時の俺達にしてはかなりの広さだった。このときは、鬼ごっこ……そう、鬼ごっこをしてて羽衣が鬼だったんだ。
「そんなんじゃ追いつけないよ〜だ。鬼さんこちら〜」
「羽衣ちゃ〜ん、私はこっちだよ〜。早く来ないといっちゃうよ」
 運動神経が悪いって訳じゃないがやはり昔から得意ではなかった。だから鬼ごっことなるといつも鬼になってたっけな。
「はぁ……はぁ……追いつけないよ〜……。う、う……うわぁぁああ〜ん!!」
「×××ちゃんどうする?」
「そうだね……。違う遊びに変えよう〜。滑り台だったら羽衣ちゃんも得意だしね♪」
 ……×××ちゃん? ……俺は誰と喋ってるんだっけ? 名前が思い出せない……。
「羽衣〜。早くこいよ。今度は滑り台で遊ぶぞ〜」
「滑り台? 私いっちば〜ん♪」
「あっ! ずっる〜い。私のアイデアだから私が一番だよ〜」
 あの頃は楽しかったっけな。親が迎えに来て日が暮れるまで遊んだものだ。懐かしいな……。この後は確か……。
「×××ちゃん。迎えに着たわよ」
「あっ、お母さん……」
 そうそう。×××ちゃんのお母さんが迎えに来たんだ。
「ちゃんとご挨拶したの?」
「…………」
 うつむいたまま喋らない。いつもならさようならといってお母さんと手をつないで変えるはずなのに。
「どうしたの滝ちゃん??」
羽衣もようやく俺達に追いついた。
「滝君、羽衣ちゃん、今まで遊んでくれてありがとうね」
「今まで? これからも一緒に遊ぶよ? ね? ×××ちゃん?」
「…………」
 どうも歯切れが悪い。何かあるのだろうか?
「私達ね。明日お引越しなのよ。……お別れになっちゃうのよ」
「お、お別れ……?」
 引越し? 最初はおばさんが何言っているのかよくわからなかった。ずっとこのときが続くと思っていたから……。
「ご、ごめんね……ひっく……ごめんね……。どうしても言い出せなくて……ひっく」
 ×××ちゃんは泣き出していた。たぶん申し訳ないというのと……一緒に居たいと言う気持ち。これが交差しているんだと思った。
 俺は一緒にいるのが当然だとずっと思っていた。それが必然だと思っていた。「一緒に」いることが普通だと……。
「それじゃあ、また会う機会があれば一緒に遊んであげてね。×××ちゃん、バイバイは?」
 ×××ちゃんは俺達に手を振って帰っていた。俺達が見えなくなるまで手を振っていたのを覚えている。これが最初の
別れだったのかな。
「私のせいだ……」
「えっ……?」
「私が鬼をちゃんとしなかったからだ……」
「何言ってるんだよ?」
「だって!! さっき言ってたもん……」
「何を?」
「……早く来ないといっちゃうよって……。私が……私が……。ひっく……ひっく……うわぁあぁぁあぁ〜〜〜ん!!!!!」
 今思えばおかしな話だけど、当時は本当に純粋だったから全てが本当に見えていたんだ。意味は違うかもしれないけど、
確かにそういってた。……今なら分かるんだけどな。
「羽衣……。俺がもっと×××ちゃんのことを見ていれば……ちゃんと気づいてあげられたら……」
 羽衣はなき崩れていた。俺はそれを慰める。その俺も涙は流れていた。どれくらい泣いていたんだろうか? とにかくずっと……、
ずっと……。
「僕さ……。スポーツをやることにするよ」
「えっ……?」
「友達のこと……仲間のことがよくわかるように。もっと理解しあえるように。×××ちゃんのようにならないように」
 それが俺がスポーツを始めた理由。仲間を大切に思う理由。別れは絶対に嫌だ! 苦しい思いはしたくない! 仲間とは……友達
とは離れたくない! 団体スポーツは一匹狼ではできない。常に仲間のことを考える。だから一緒にいられる、理解しあえる。
 だから仲間のことを人一倍に大切に思える。……もう失くしたくないから……。
「私も……泣かないようにする」
「泣かない?」
「×××ちゃんは私が泣くといっつも助けてくれたの。だから心配をかけなくてもいいように。
 ……滝ちゃんにも心配かけないように。慰めてもらわくてもいいように。……離れたくないから。滝ちゃんの前では泣かない!」
 だから羽衣は泣かなくなった。羽衣が泣いているのを見たのはこれが最後。慰めたのも最後。
「俺はどこにも行かないぞ? 引越しもないぞ?」
 この当時の羽衣はきっと泣くと友達が離れていくんだと思っていたんだろう。だから俺の前でも泣かなくなった。
 でも俺はその理由の意味が分かってなかったんだろうな。でもようやく気づいた。時間は掛かったけどな……。

「あのときのことを思い出したよ」
 なんで羽衣は泣かなくなったのか。どうして今泣いているのか。ようやく分かった。
「あの時はちゃんと言えなかったけど、今なら言える。羽衣、俺はどこにも行かない。約束する」
「滝ちゃん、ひっく……ひっく……」
「ほらもう泣くなよ。俺達は「一緒に」いられるんだ。ずっとな」
 俺はしばらく羽衣の頭をなでていた。なんだか懐かしいな。今がとても安心な時間に思えてしょうがない。でも、
実際はそうじゃないんだよな。俺達は異世界で冒険していて、世界の危機を救おうとしている。
「なんか胸がすっきりしたよ。久しぶりに滝ちゃんの胸で泣いたからかな? かな?」
「俺の胸でよければいつでも泣け。「一緒に」いるんだからさ。立てるか?」
「うん。私は……たぶんこの言葉を待ってたんだと思う」
 この言葉?
「一緒に……」
「一緒に……か。心配になったらいつでもお前のそばで言ってやる。俺達はずっと一緒だってな」
 俺達には時間がある。一緒にいられる時間がな……。それを面と向かって、俺の声で言ってやるんだ。
「お〜い、私のこと忘れてないか〜い?」
「覚えてる覚えてる。だから言ってるじゃん、「俺達」って。もちろんアデリアも含まれてるに決まったじゃないか」
 そう……。俺達なんだ。自分だけとか、アデリアだけとか、羽衣だけじゃ意味が無い。全員がそろってこその俺達ってことだ。
「それじゃあ、俺達がずっと一緒にいられるようにして行こうじゃないか」
「「うん!!!」」
 俺達は世界を救う。そんな大それたことは実感できない。でも世界を背負っている。俺達にしかできない。だから俺達がやる。
 一人じゃなくて……一緒に進んでいくんだ。
「おっと、忘れるとこだった。なぁ羽衣。俺達が昔一緒に遊んでた子って名前なんだっけ?」
「引っ越したあの子か……。そういえば名前なんだったっけ? 忘れたらいけないような名前だったのに……。
いつごろから忘れていたんだろう……」
 友達だったはずなのに、一緒にいたはずなのに、どうして忘れたんだろう……。いつかこのたびが終わって時がたてばアデリア
のことも忘れてしまうのだろうか? 忘れたくない。それに忘れられない。あの子も忘れた……とは違うような気がする。少しの違和感。
 それが何かは分からない。でも……何かが引っかかる。俺は思い出せるだろうか?
「まぁそれについてはオイオイ考えるとして、そろそろ行こうか」

 この空間はなんなんだろうか。真月の血が関係している空間に思える。誰も踏み入れない地なのだからその可能性は高い。
 だが俺の力は無いに等しいと言っていいだろう。では何故道が開いた? やはりあの声があったからだろう。
 俺達が空を向いたのはおとり。その隙に「何か」をしたんだろう。それが何なのかは分からない。アデリアも羽衣にも分から
ない様子だ。
 最初は罠かもと思ったけれどそういった様子も無い。それは俺が真月の血を受け継いでいるから? 俺を招いている?
 確かに真月の血を受け継ぐ者しか踏み入れられない地、俺を招き入れるのは納得がいく。だが、少しまどろっこしい。
 何故あの時素直に道を出さなかった? 何故空を向かなければならなかった? アデリアや羽衣がいたから?
 でもこの先に二人が通ることは十魔もガーゴイルも認めたこと。それは十魔から直接話を聞いている。では……何故?
「見えてきたね」
 どうやら行き止まり……って言うか終点の場所と言ったところか。その場所には遠くからでもはっきりと見える大きな木が立って
いた。あれが何か関係しているのだろうか。
「そういえば今回はいなかったな」
「何が?」
「ガーゴイルみたいな門番。入り口で戦ったベリウスはGMウイルスの手下。あれは門番じゃない」
「確かに……なんでだろうね?」
 逆に俺を試しているんだろうか? しかし何を試す? 試したいものが何か分からない。……いないはいないで別にいいんだけどな。
 しかし……この木はでかい!!! 何年前から在るんだろうか。樹齢千年とか? まぁ適当だけどね。
「真下まで来るとでかさ倍増だな」
「圧倒されちゃうよ……」
 地球じゃ考えられない大きさだな。少なくとも俺は見たことが無い。やっぱり生態系とか違うのかな。動物とかはわかんな……
アリアがいたな。あれはまさしく進化の神秘だな。地球とは違う進化をたどった、としか言いようが無いな。
 この木もこの星のものだからこんなにでかいのだろうか?

 ようこそ……。

 あの声だ。やはり招き入れたのはこの声の主のようだな。しかし、姿が見えない。声はするのに姿が見えない……幽霊じゃないよな?
 ……馬鹿な考えはよそう。この世界には魔法があるんだから、それの効果……これが妥当な考えだろう。
「声の主よ! 俺が真月の血を受け継ぐ者! 真月滝だ! 姿を見せてくれ!」

 これから貴方をためさせてもらう……。

「試す? どういうことだ?」
 真月の力を試すということなのだろうか?

 真月の血の力を示せ、そう言うことだ……。

 やはりそう言うことか。まずは力を示せか……。やっぱ真月は普通じゃないんだな。
「分かった。力を示そう。しかし何をすればいい?」
 力の示し方にもいろいろある。俺なら剣術とか……自信ないけど。後は……とにかく! 色々だ。

 この子と戦ってもらう……。

 そうすると目の前に一体の……いや、一人の少女が現れた。人間……かな? とにかく人型の何かが現れた。
 これを倒せということか。力を示すにはいい方法かもな。
「んじゃちょっと行ってくるわ」
「私達も……!」
「ガーゴイルのときもそうだっただろう? きっと今回も同じ。俺の力を示せといっているんだ。だから……行ってくる」
「……うん。じゃあ応援してるね♪ せーの……!」
「「ガンバッテ!!!」」
 がんばりますとも!!! ここで負けるような俺じゃない!!!!
 そう、ここで躊躇なんかしてられない。おそらくこいつを倒せば前に進めるのだろう。だったら俺に迷いは無い。
 前に進むための最善を尽くす。すなわち、こいつを全力で倒す!!
「それじゃあまずは挨拶と行こうか。俺の名前は真月滝、真月の血を受け継ぐ後継者だ。お前は?」
「……サーシャ」
「ではサーシャ、お手合わせお願いするよ」
 俺は剣を構える。サーシャはどういった攻撃をしてくるのだろうか? まず武器は……持っていない。と言うことは魔法か?
 いや、それだけと決め付けるにはまだ早い。俺の知らないことはまだまだ多い。何か他の策があるのかもしれない。
 何にせよ油断は禁物だ。
「…………」
「…………」
 緊迫した空気が走る。相手の手が見えない以上、俺も簡単には手が出せない。今までは突っ込むことも考えたが、ここまで来ると
さすがに戦いにも慣れてくる。ゲームでもそうだが、俺の手の内を見せない、これも立派な作戦の内だ。サーシャも同じ考えだろう。
 どちらが先に動くか……。俺か? サーシャか?
 ……どちらも動く気配が無い。俺は単にサーシャが動くのを待っているだけなのだが、サーシャが何を考えているかが問題だ。
 もしかしたら今も魔法の詠唱をしているのかもしれない。力をためているのかもしれない。どちらにせよ相手のほうが確実に
戦い慣れしているのだろう。雰囲気で分かる。だったら俺の手の内はバレテイル? バレテイルノカ?
「よし! 考えるのは止めだ!」
 そう。俺の戦い方はおそらくこんなんじゃない。おそらく俺は緊張しすぎて慎重になりすぎているんだ。このままじゃ拉致が
あかないのも事実。だったら俺から仕掛けようじゃないか! 俺の手の内が知られてる可能性があるなら先に仕掛けようじゃないか!
「行くぞ!!」
 俺は構えなおし、サーシャに突っ込む。だが俺とて何の策も無いわけではない。微力では在るが策を立ててある。……策はこうだ。
 まず斬りかかる(いつもと変わらないのだが)。その後俺は一歩後ろに下がる(攻撃がかわされるのを計算に入れて)。
 その後すかさず力をためる。少しはコントロールできるようにもなったからすぐにできるだろう。力が溜まったら斬撃破を打
ちかます! いい作戦だろ?(結局いつもと同じだな) では……作戦開始だ!
 作戦通り俺はサーシャに突っ込んでいく。そして俺は斬りかかる、もちろんかわされる。予想通りだ。
 俺は一歩後ろに下がり、力を素早くため始めた。作戦開始からほんの数秒で全ては終わろうとしている。……俺の勝利と言う形で!
「くらえ! 斬撃破〜!!」
 ……考えが甘かったのだろう。相手は武器を持っていなかった。だから魔法使いと思っていた。魔法使いと言えば肉弾戦は
圧倒的に不利。だから早めに肉弾戦に持ち込みたかった。だが……サーシャのほうが一枚も二枚も上だった。
 もしもサーシャが武器を隠し持っていたとしたら肉弾戦を得意としていただろう。
 魔法使いだった場合……どんな行動に出るか考えていなかった。魔法使いは魔法を唱えているイメージがある。
 だから、あまりその場を動かないと思っていたからだ。だからこそ力任せな作戦を立てたのだ。だってそうだろ? 動かない相手には
力押しをする。そう考えるだろ? ……でもそれだけじゃ勝てないんだ。俺はもっと先を読む必要がある。
 今回のような出来事にだってならないわけではない。ではなぜ先のことをもっと読まなかった? ……俺が未熟だからだ。
 少しは手馴れたと思っている。確かに戦闘は前に比べるとなれた。でも……現実は甘くなかったと言うことだ。
 じゃあ今なすべきことは……。
「降参……なされますか」
「俺はさ……皆がいないとダメなんだ。今も勝った気でいた。でも結果はこれだ。俺ががんばんないと……皆が離れていく気が
するんだ……。あの子の様に……。それは悲しいこと、それは苦しむこと。だから俺はあきらめちゃいけないと思うんだ。
もちろん……今の状況でも諦めていない」
 そう、諦めてはならない。諦めてしまえばそこでおしまい。でも諦めなければチャンスは来る。必ずそのときは来る。
「いい心がけです。しかし……それだけでは私には勝てません。貴方は今絶体絶命の状況下にいます。貴方ならどう抜け
出しますか」
 サーシャは……俺を試している? 確かに声の主からは力を示せと言われた。サーシャが出てきたときは戦うと思っていた。
 実際戦ってはいるのだが……。たぶん戦う以外の方法でも試されている……んだと思う。
 普通敵なら倒そうとするはず。だがサーシャは違う。ここから抜け出すにはどうしたらいいか、そんなことを聞いている。
 それは情け? 同情? 自信?
 でも、きっかけを与えてくれたサーシャには感謝だ。俺はまだ負けた訳ではないと言うことになる。負ける気はなかったけど実際は
そうでもないのが分かる。
 今の俺の状況は、自分でも絶体絶命と言っていいだろう。ナイフ(どうやら隠し持っていたようだ)を首に
突きつけられていると言う状況。
 でも殺意は感じない。さっきのどう抜け出すかと言う言葉はウソではないととれる。ではどうやって抜け出す?
 首にはナイフが突きつけられている。動けばおそらく刺さってしまう。じゃあ動かないでこの場を脱するにはどうすればいい?
 と言うか俺にそんな技術があるのだろうか。少なくともそんな方法は……いや……一つだけ知っているかもしれない。
 あれは確か……。
「もう降参なさいますか」
「降参? さっきも言っただろう。俺はあきらめちゃいけない。今の状況でもあきらめていない。その言葉を今証明してみせる!」
 うる覚えだがやってみるしかないだろう……。
 俺は、右足をサーシャの足の間に入れ右足をサーシャに右足に引っ掛け、思いっきり蹴り上げた。案の定サーシャはバランスを
崩した。ナイフを持っていた手で地面をついて体を支えてしまっていた。もちろんその隙を見逃さない!
 俺は勢いよく左手のほうを振り払い、逃げ出した。
「……見事です」
 確か刑事もののテレビで見たような気がしたんだ。護身術みたいなものだったような気がする。
 相手の利き腕のほうの足をこけさせることにより、利き腕が体を支えてしまう。そんな話をしていたのを思い出したんだ。
 たぶん当時はまったく信じていなかっただろう。でも……効果はてきめんみたいだな。
「……それなりの知識あってのことだよ」
 こんな事言ってるが……賭けに等しかった。所詮は見た程度のもの。やってみたこともないし、ましてや信じてもいなかった。
 賭けに勝ったからよかったものの……、見事と言われるのもそれなりに複雑だな。
 そんなことよりこれからのことを考えなければ。相手のほうが一枚も二枚も上手。俺はそれよりも先を読まないといけない。単純な
作戦では通用しないと言うことだ。一対一と言うことはできる作戦も限られる。羽衣やアデリアが居るならいくつもの作戦が考えられる。
 だが今は一人。一対一の作戦はどんなものがある? 一対一……一対一……。力押し! ……これはさっき試したな。んじゃあ、
俺は何ができる? 力押し以外で出来る事はなんだ? 俺が有利に戦闘を進められる方法はなんだ?
 俺が持っていてサーシャが持っていないもの。俺とサーシャの違い……。クソッ! 何があるんだ! 何が……。
 クールになれ……クールになれ、俺。あいつはおそらく魔法使い。でも武術にも長けていると見ていいだろう。大して俺は……、
剣術が使える。体力には自信がある。体力? 俺には体力がある……ではサーシャは? 俺は男だ。しかもスポーツをしていたから
体力に自信がある。もちろん実証済みだ。対してサーシャは姿は女性。実際性別があるかどうかはわからないが、見た目は華奢な女性。
 では体力はそれほど無い? しかし武術が長けているとしたら体力があるかもしれない。それだけの違いでも大きな差がある。
 それをどうやって見極める? 奴は魔法使い、体力の回復魔法を持っていたとしても不思議ではない。ではこれは却下と言うこと
になる。他には何かあるか……何か、剣術……剣術……剣術? 剣……剣……。
「あぁーーーーー!!(ヒッソリと)」
 剣だ! 剣だ! 忘れてたーーーー! 俺の剣は……俺の剣は……刃こぼれしているーーーー!!!
 やばい完全にテンパってる。どうしていいかわからない。あの時はアデリアに剣を借りた。しかし今の状況を見ると借りに行ける
状況ではない。張り詰めた緊張感。サーシャのナイフから逃げた時からとてつもない緊張感が走っている。
 サーシャも本気になりかけているのかもしれない。どうする……。
「何か考えているようですが、来ないなら私の方から行かせていただきます」
 やばい攻めてくる! まだ策は立っていない。それどころか剣の刃こぼれに気づいてヤバイ状態! 剣は使えない、体術……。
 やってみるか! それしか方法は無い!
 俺は勢いよく剣を投げ捨てる。今出来る俺の最善の方法。これは俺と剣の決断。それをこの勢いに込めた。
「さぁ……来いよ!」
 俺の目の前からサーシャが消える。魔法か!? いやあわてるな、クールになれ! 何か痕跡が在るはずだ冷静に考えろ!
 魔法を使うには……そう、詠唱が必要。と言うことはサーシャも何かを唱えている? 今姿を消した際にも魔法を使った。
 術を唱えた。術を唱えるときに出すものは……声! サーシャの声だ。
「…………」
 声を聞くんだ。全てを研ぎ澄ませ。全ての考えを捨てろ、全ての雑音をかき消せ。サーシャの声だけを追うんだ。
 おそらく攻撃を仕掛けてくる瞬間、詠唱の声が聞こえるはず。それを聞くんだ。それでサーシャの場所を特定することができる。
 では肉弾戦に持ち込んできたら? そのときは音がする。生き物は行動するとき必ず音を発する。だからそれを聞く。
 全ての思考よ、集中するんだ。絶対に聞き落とすな。
「…………」
 どこにいるかを把握しろ。サーシャだけを追い続けろ。近くに居るのは間違いない。絶対に見逃すな。
 声を聞くんだ。音を聞くんだ……。サーシャをココロの目で見るんだ!
「…………、!!!! そこっ!!!!」
 俺は勢い飛び込んでいく。その先には……!
「んっっっ!!!」
 俺はサーシャの体をつかんだ。状態としてはレスリングをしているような状態。ここからどうする!? あまり考えている
時間はない。早急に次の手を考えなければならない。サーシャは少しばかり動揺している。俺のこの動きを予測できなかったのだろう。
 だから同じように……。同じように考えろ。サーシャを負かすにはどうしたらいい!? それだけを考えろ。
 しかし、時間をかけるな。サーシャに考える時間を与えてはならない。それだけでも不利になる。……こんな考えはやめよう。
 これだけでも時間の無駄になる。こんな思考は停止させろ! こんな考えはすぐにやめろ! 目の前だけを見つめろ。
 この状況だけを考えろ。打開策はある。状態は俺のほうが有利。サーシャは身動きが取れない状態。俺は動ける。
 動ける……動ける! これで行こう!
 俺は……サーシャの脚を離した。サーシャは一瞬キョトンとした目で俺を見た。しかし、すぐに俺との距離をとった。
「……どういうおつもりですか」
「そればかりは教えられない」
 俺は動ける状態にあった。サーシャは動けない状態にあった。このことを知ることが出来た。それが俺の勝利につながる、
 そう思った。だからサーシャを離した。
 サーシャはまたも魔法で姿を消した。今回しっかりと聞いた。サーシャの詠唱を!
 この距離でも詠唱は聞こえる。俺の頭脳に情報が足されていく。必要な情報が増えていく。不必要な情報はすべて排除。
 戦いに不要な情報は全て破棄。今出来る最善の方法を体全体を使って行う。
「ここが……正念場……」
 相手の位置を予測するんだ。今は姿を消しているからどこに居るか分からない。しかし予想なら出来る。一つ言うなれば……、
俺の後ろだ。当然背中は隙が出来る。背中に目はついてないし、後ろに立たれても普通すぐには気づかないだろう。
 でも俺はその「普通」ではない。俺の直感 反応のレベルかなり高い。
 気づくことが可能だ。そう言っても、やはり少しは隙が出来る。その隙をどう埋めるかだ。後ろを取られないようにするにはどう
するかと言うことになる。実際こんなことは不可能だろう。更に言ってしまえば、サーシャは魔法を使う。
 小さな小細工では通用はしないだろう。今剣も何も無い状態で出来ることはかなり限られている。
 結論を言えば……今の俺に出来ることは無い、そう言うことになってしまう。まぁ……何とかするしかないだろう!
「さて……集中だ……」
 散らばっている情報を全て終結させろ。必要な部分の見抜きだし後は削除。今は必要最低限の情報があればいい。
 そうでもしないと勝てない気がする。やはり剣がないのは大きかったようだ。剣の練習はしても体術の練習はあまりしていなかった。
 でも、まったくしていなかったと言うわけではない。この方法を思いついたのも多少練習した結果……だと思う……かな?
 まぁいいや、そんなことは……。これだよこれ! こんな考えは捨てろって!
 ……では改めて……。
 必要な情報は今! ここに! 終結した! あとは相手の位置をつかむだけ。サーシャはやはり俺の後ろに出てくるだろうか?
 しかし、その場所だけが怪しいわけではない。遠い場所に出て、そこから魔法攻撃。こんな手もあるはずだ。
 しかも俺はさっき相手の足を持ち、倒すことに成功している。簡単には俺に近づかない、そう言うふうにも取れる。
 近くに出てきたなら作戦開始。遠くだった場合は? …………。
 大丈夫、サーシャは俺の近くに出てくる。……確信は無い。でも……俺の近くに出てくる。なぜかそう言える。
「……ぁ……」
 ふと声が聞こえた。この声は……サーシャの声だ。間違いない。声が聞こえたと言うことはそんなに遠くには居ないと言うことになる。
 近くに居る。どこに居る? 後ろ? 正面? …………。声を聞け。声が聞こえたと言うことは詠唱をしている可能性が高い。
「……ぁ……ぅ……」
 また聞こえた。何の詠唱だろうか。攻撃魔法と言うことは想像がつく。でも俺にはそれの対処方法を知らない。
 避けるほか無い。無事に避けられるだろうか? 避けるんだ。情報はそろっている。魔法を打つ瞬間が勝負だ!
 サッ。
 何かが移動した音が聞こえた。俺は覚悟を決めた。
「行くぞ! ……そこっ!!!!」
 俺は先ほどと同じように「その場所」に飛び込んでいった。もちろんその先には……。
 ガシッ!!!
「よしっ!!!」
 俺は先ほどと同じように体をつかむことに成功した。こっからが俺にとっての本番だ。
「くっ……」
 身動きが取れていない。先ほどと状況は同じ。ならあれが使える。あの方法しかない!
「さ〜て……行かせてもらう。俺はお前に勝って……力を示すんだっ!!!」
 俺の手に風が集まりつつある。これは剣術を覚えてから習得した技。そう……斬撃破だ。それの応用版。あれは遠距離攻撃が
可能だった。でも今回は違う。近距離でしか使えない。ガーゴイルのときにやった近距離からの斬撃破。
 あれと同じ感じだろう。威力は十分の一くらいか。しかし、勝つには十分だ。見た感じ華奢な奴だ、何とかなるだろう。
「あのとき離した理由はこの為だった……そう言うわけですか」
「喋れる余裕があるというのか?」
 さすがに俺を試すと言ってきただけのことはあるな。俺のこの攻撃では負けない、そう思っているんだろうな。それでも……。
「?」
「……それでも俺は……。負けられない! サーシャにも自信はあるかもしれない。でも……俺は負けてはいけない!」
 体の力が解放されていく。全ての力が右手に終結されていく感じがした。俺の腕力は自分では強いと思っているが、一般的には
普通の範囲だ。でも今は違う。この感じは……明らかに俺の限界値を越えている! 超越感を感じる!
 神経が右手だけの集中していく。今まで頭にだけ集中させていた感じが一気に解放されていく。その開放感がやけに気持ちいい。
 頭がすっきりしている。何も考える気がしない。全てが右手に集中しているからだろうか? 今はそんなこと分からない。
 右手に力がある、そのことしか分からない。いや……それが今の俺に必要な情報。そう……勝つための!!!
「…………。そろそろです」

 そこまでです。戦闘をやめなさい。

 あの声が聞こえた。俺はその声で頭に神経が戻っていくのが分かるような気がした。頭に正常な考えが戻ってきた。
 削除した情報が全て復元されていく。自分の情報、友達の情報、その他もろもろ。普通の頭に戻ったと言うべきだな。
 研ぎ澄まされていた感じはすでに抜けていた。

 真月の血を受け継ぐ者よ。木の前に来られたし。

 あの大きな木のことを指している。そこにはアデリアと羽衣も待っている。もちろん、俺の戦いを見ていたのだ。
 周りから見ていたら、俺は無様だったのかもしれない。剣を投げ捨てて戦っていた。剣士を名乗るものにとっては意味不明
な行動になる。あの時はそんなことまでは頭が回らなかった。……過ぎてしまったことだけどな。

 俺は木の前までやってきた。
「お疲れ様だよ〜。ちゃんと見てたからね、滝ちゃん」
「お疲れ様。私の剣、貸してあげたらよかったね……。ごめんね」
「アデリアが誤ることじゃない。そのことに気づかなかった俺も悪いからな」
 フォローを入れておく。ちゃんと確かめなかった俺が悪かったんだからな。

 皆さんそろいましたね。真月の血を受け継ぐ者よ、おつかれさまでした。力は見せていただきました。

「それはいいんだけどさ……そろそろ姿を見せてくれないか」

 いいでしょう。それでは少し下がってください。

 そういわれ俺達は後ろに下がる。一体どこから登場すると言うのだろうか? 見た感じ目の前には木があるだけ。
 周りは何にも無い。野原が広がっているだけ。木の後ろにいるとでも言うのか? ……そんなわけ無いよな。ではどこに??
 そのとき、目の前の木が異様な光を放った。一瞬のことだった。
「私は……ここに居ます」
 目の前に一人の女性が立っていた。
「貴方が、先ほどまでの声の主様なのでしょうか?」
「はい。そうです」
 さすがはアデリアだ。王宮に出入りしていただけあって、言葉遣いは丁寧だ(羽衣もそれなりには丁寧だが)。
「貴方は……アデリアさんですね?」
「私をご存知なのですか!?」
「いえ、知っているのは貴方ではなく、貴方のおじい様と言うところでしょうか」
 アデリアのおじいさん? 有名な人なのかな……。
「おじい様を……そうですか……」
「……失礼致しました。この話は忘れましょう。では……本題に入ります」
 なんだったんだろうか……。まぁでも本題に入るらしいからいいけど。……アデリアの辛い過去……かもな。これ以上の詮索は
アデリアの負担になるかもしれない。やめておこう。
「その本題ですが……、」
「まってくれ! まずは自己紹介しないか? 俺達はまだ貴方の名前を知らない」
「……分かりました」
「んじゃ俺から。俺の名前は真月滝。真月の血を受け継ぐ後継者。地球出身だ」
「私は涼宮羽衣、滝ちゃんと同じ地球出身です」
「私の名前はアデリアと言います。この星、エクストランの出身になります」
「私の名は……ハクアと申します。あなた方から見れば私は妖精の立場となります」
 妖精? 妖精と言うと……あの絵本とかに出てくるあの妖精? 見た感じ羽は無い。浮いてもいない。……妖精のイメージが無い。
 しかも何かに似ている気がする。妖精じゃなくて……え〜と……そう! あれだ!
「サーシャだ! サーシャに似ているんだ」
 羽衣とアデリアはキョトンとした目で見ていた。二人はあまりサーシャを見ていなかったからだろう。俺は戦いのさなか何度も
サーシャの顔を見てきた。だから似てると言える。うん、似てる。
「はい、似ていると思います。あれは……私の化身ですから」
 化身か。なるほどな。あまり驚かない自分にもびっくりだが、……魔法を使うくらいだもんな、それくらいあっても不思議ではない。
 今まででも色々有ったからな。これからもこういうことが起こっていくんだろうか。
「それでは、自己紹介も終わりましたので本題に入ります。あなた方のこれまでの経緯をお願いします」

 俺達はこれまでの経緯を話した。特に十魔のことが中心の話だった。
「……そうですか。十魔と会われたと言う事ですね……。事態は私が考えているより深刻と言うことですか……」
「深刻……かどうかは分かりませんが、今までのお話は全て事実です」
 隠す必要は特に無い。ありのままを話す。
「七夜……このことについてもお聞きですか?」
 七夜……。確か制限があるとか言ってた。このことだろうおそらく。
「少しだけなら聞いた。でも、制限があるとかで重要なことは聞いていないと思う」
「確かに制限があります。十魔が話すわけにはいかないのです。それの代行が私たちと言うわけです」
 代行……。十魔とハクアは繋がりがある? どんな繋がり? 七夜と言う言葉に関係ある? 直接聞くのが一番だろう。
 目の前に聞ける相手が居るんだから。
「ハクアは十魔と繋がりがあるのか?」
「あっ! 私も気になってた。アデリアと今ちょっと話してたの」
 さすがの羽衣も気づいたのか。……って言うよりはアデリアが気づいたっぽいな。アデリアなら気づいてもおかしくないだろう。
 羽衣は……もう少しがんばろうな。
「……七夜の事と共にご説明いたしましょう」

 ハクア(私)と十魔の関係について
 皆さんが聞いたとおり、十魔は古代兵器を封印した。でも実際はそれだけでは終わらなかった。
 封印後私達は出会った。世界を……七つの世界を旅した。私と十魔のほかに後六人の仲間がいた。
 十魔を除いた私たち七人が後の精霊、今の姿になったのです。
 この場合の精霊はその世界の神、そう言う見解になります。
 しかし、私達以外はこのことは知りません。もちろん各世界の王達も。
 鍵となるもの(あなた方は例の謎と呼んでいました)は真月の血の特殊な力で守っていました。
 その鍵を手に入れた者達は私の元には来ていない。何らかの手段で鍵を手に入れ、
古代兵器を復活させた。ラグーンを倒したと言うのも脅威では有ります。
 ……十魔はこのことを予想していた。
 旅の途中何度か呟いていた。脅威が来る……と。
 それに対する策が私達、精霊でした。
 真月の血には不思議な力がある。私達を精霊にして各世界に留まらせた
のも十魔です。私達七人は真月の血とともにありました。
 真月の血とは以前からの長い付き合いと言うことです。

 七夜「世界」について
 これが七夜の一つになります。別名として、七世界と呼びます。
 七夜について知っているのも私達精霊と真月の血を受け継ぐ者、そして
貴方の仲間と言うことになります。今回は七世界の説明をします。

 七世界について
 読み方は「シチセカイ」と読みます。
 皆様知っている通り七つの世界のことです。
 エクストラン、地球、ミッドガル、エデン、ラグーン、クメール、セイクリッド。
 この七つで出来ています。各世界に一つずつの鍵、そしてエクストランには古代兵器が
眠っていました。今となってはこのことについて説明しても意味がありません。
 この七つの世界はもともと一つの存在でした。それを十魔が七つに分割した。
 分割した理由は二つありました。
 一つは古代兵器の封印。あの当時封印をするためにはこうするしかなった。
 あれはあまりに巨大なもの。一つの世界に封印することは出来なかったのです。
 そこで考えたのが世界の分裂です。
 もう一つの理由。それが真月の血の封印です。
 この世界分裂によって真月の力は封印されていました。
 もちろん封印されはしましたが、その力は巨大だったため、
更に抑制する必要があった。それが吸収。

 その血は真月の素養を持つものが現れると、
真月の血は素養を持つ人間に吸収される

 十魔はこの方法で力を更に抑制した。それでもまだ大きかった。
 そこで各世界にも力を留まらせることにした。私達がその仲介に居るわけです。
 時が来るまで力を……封印しておく。それが私達の二つ目の役目。

 つまり七世界とは真月の血によって作られた、全てを抑制する世界。
 古代兵器の解体。つまり力の抑制になります。
 真月の血の抑制。真月の血の封印です。
 争いの抑制。古代兵器がまた作り出されないように人々を分かれさせた。

 以上で七世界の説明を終了します。

「…………」
 俺達はこの話の中で一言も喋る余地が無かった。俺達が思っていたよりはるかにすごい出来事なのかもしれない。
 一旦整理をしよう。

 まず、ハクアは十魔の昔の仲間だったと言うことだ。古代兵器を封印後も十魔は行動をしていた。
 そこで出会ったのがハクアだった。他にも六人の仲間がいた。おそらくこの六人はハクアのように各世界に妖精(神)として
居るんだろう。
 ハクアのところに鍵を取りに来たものは居なかった。何らかの方法で鍵を手に入れた。他の星でも同じことが起こっている
と思ってもいいだろう。
 そして、七夜だ。今回は七世界を教えてもらったようだ。
 真月の血によって作られた、全てを抑制する世界。
 七つの世界に分かれていると言うのは王宮のあのメモを見たし、ある程度は分かっていたつもりだ。でも、世界がこんな理由
で作られたっていうのは知らなかった。古代兵器はそれほど強力なものだった。
 一つの世界においておくといずれ同じ過ちが来ると思ったんだろう。だからこそ、世界を分割した。
 ここで問題なのが・・・真月の血の抑制。あの泉で十魔と出会って力を解放してもらった。おそらくこれが最初の抑制の
場所だったのだろう。それの開放により他の力も解放できるようになる。これが俺の推理だ。別に真実はどうでもいい。
 ただ気になるのは……真月の血を何故封印したのか? この行動にも意味があったのだろうか?
 ここだけがどうしても引っかかってしまう。これはハクアに聞くとしよう。
 今必要なことはこれくらいだろうか。

「ハクアに質問があるんだが、いいか?」
「いいでしょう。言ってみてください」
「何故十魔は力を封印しようとしたんだ?」
「十魔は話していないのですか? ……GMウイルスです。十魔はこれにも予感を抱いておりました。何かは分からないが、
自分の力が悪用される気がする……こう言っていました。そう言うことはあってはいけない、自分の力は特別だから。
こうも言っていました。だからこそ十魔は封印を選んだのです」
 しかし、事は起こってしまった。GMウイルス……忌まわしきウイルス。最初作り出そうとした奴は善意だったかもしれない。
 でも実際はそうも言ってられない。悪いほうに転がってしまったのだから。もし十魔が力を封印していなかったと思うと
ゾッとする。抑制していても危ない存在なのに……いや……抑制されていないのかもしれない。
 鍵に至ってもそうだ。今回どうやって手に入れたか分かっていない。そう言った分からない部分も有る。
 だから何らかの方法で力の抑制を、自分達で開放した……。……考えられないことではない。
 封印はおそらく十魔にしか解けない。……もっと簡単に言うと、真月の血が通っているものが封印を解ける、そう言うことだと思う。
 俺は十魔に解放してもらった(まだ完全な状態ではないが)。GMウイルスは真月の血を基にしたもの。……ここまで言えば分か
るだろう。
 GMウイルスがあれば、封印を解くことが可能かもしれない。実際はどうか分からない。でも一筋縄ではいかない。これは確かだ。
「俺はある程度は理解したつもりだ。アデリアと羽衣はどうだ?」
「……ちょっと戸惑ってるかな。陛下の話しと違う点と言うか、追加されてる部分とかあるから……」
 古代兵器を封印した……ここで終わらなかったことと説明してくれた。確かに俺が聞いたのも古代兵器を封印したところ
までだった。アデリアによると資料にもそこまでしか書いていないのだと言う。長年聞いていただけに戸惑いくらいはあるよな……。
 羽衣ほうはどうだろうか?
「あんまりついていけてないって言うのが現状かな……。もっとしっかりしないとね……」
 羽衣の場合は、ほぼ関係なしと言ってもいいこの問題。ついていけないのも納得がいく。でも羽衣の場合それじゃ納得いか無いんだ
よな。……後でフォローしとくか。

「ここで説明できることはこれで全てです。……それでは、開放に参ります」
「「「開放〜??」」」
 何のことが分からず声がそろってしまった。十魔の時みたいにパワーアップをすると言うことなのだろうか?
「十魔から……まぁいいです。ご説明いたします」

 聖具と真書について
 聖具と言うのは七つの武具のことです。
 私達が使っていた当時の武器、それが聖具です。
 真書は七つの書物です。
 私達が使っていた魔法が書かれている書物、それが真書です。
 各精霊達が一つずつ所持しています。ちなみにこれは七夜には入りません。
 十魔にも聖具と真書が存在します。計八つづつあることになります。

「……そんだけ?」
「実際見ていただいたほうが早いと思います。では……いきます!」
 って! いきなりかよ! ハクアの周りが光りだす。この光は何度も見たことがある。何かが起こる光。さて、何が出るんだろうか。
 俺達が居る空間全てを光が覆い尽くす。そして……光が引いていく……。
「これが……」
 ハクアの前に浮いていた。……聖具と真書。これが……そうなのか……。
「お受け取りください」
 聖具が俺の前へ、そして真書が……。
「え!? 私!?」
 羽衣の前へ。
「聖具と真書は命を持っています。自らの使い手を自分達で選びます。あなた方は使い手に選ばれたのです」
 命を持っている。それが聖具と真書になった理由だとおもった。これもおそらく十魔がやったことだろう。
 どういう原理かは分からないがそう言う力がある、今更驚きはしないが、俺にもその力があったら、こんなことはよく思う。
 こんな力俺も持つことが出来るんだろうか……。

 そのとき、ある違和感を感じた。悪寒と言うのだろうか? とにかく嫌な予感がした。
「「何かが……」」
 俺とハクアが声を合わせた。何かを感じ取ったんだろう。俺も同じだった。……なんだろう。
「え? え? なになに??」
「……何かを感じたのかな」
「王都です。王都で争いが起きています」
 王都!? 陛下が居るところ! エクストランの中心部。何故また狙われてる!? 一度襲撃を受けたじゃないか!?
 クソッ!!! どうする! どうしたらいい! ここから王都までどれくらいの距離があるだろう。走れば間に合うか?
 そんな保証は無い。ではどうする? ……俺にあの力があれば……。十魔のような力があれば……!!!
「……王都の救出に行きます」
「どうやって! ここから王都まではかなりの距離がある。走ってもおそらくは……。それに俺には十魔のような力は……」
「貴方には力がある」
「でも!!!!」
「先ほども言いませんでしたか? 真月の血は抑制されているのです。私の力で一時的に開放します。こちらへ……」
 俺に王都までの道のりを確保することは出来ない。ハクアがそれを出来ると言うなら……。
「これ以上犠牲を増やしてはいけない。俺はハクアに従う」
「私も共に行きます。この世界の秩序を乱すわけにはいけません。私は……この世界を……。
……王都を落とさせるわけにはいきません。必ず奪還します。……お力をお貸しください」
「もちろんです。故郷を……守り抜きたい! 今度こそ……大切なものを!!」
 俺と羽衣ももちろん手を貸す。当然だ、俺達は誓ったからな。世界を救うと!
「この剣は使えるのか!?」
「はい、使用できます。……王都奪還後、聖具と真書を改めて説明いたします。真書は……今は……」
 真書は無理のようだ。でも緊急だから仕方が無い。しかし、剣が使えるのは大きい。俺の剣は今使い物にならない状態。
 これがあれば戦える。王都が……救える!!!
「よっしゃ!!! 王都を……絶対救うぞ!!!」
「「うん!!!」」
 俺達はハクアの周りに集まった。ハクアが俺の手をとる。暖かかった。精霊にも温もりもあるんだと感じた。
「では……いきます」
 体が熱くなってくる。これが……十魔の力! 俺に眠っている力! ハクアがいるのは心強い!
 奪還……行くぞ!!!


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*注:自主制作な為、矛盾点や脱字、誤字などが存在しているかもしれません。そういった点があればお知らせいただけると幸いです。

☆感想やご意見などもお待ちしております。矛盾点や誤字脱字による修正メールもお待ちしております。
精一杯対応したいと考えております。TOPページにメールアドレスを掲載しているので、そちらから御願致します☆


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